■馬券払戻金の課税・・・公認会計士・税理士 吉井清信
馬券の払戻金の課税の取扱いについて、税務訴訟の控訴審で納税者が逆転勝訴する興味深い判決が出ています(東京高裁平成28年4月21日判決)ので、ご紹介させて頂きます。
従来の税務実務では、馬券の払戻金の所得区分は「一時所得」とされ、外れ馬券の購入代金は必要経費として認められていませんでした。ところが、平成27年3月10日最高裁判決では馬券の払戻金を「雑所得」と判断するとともに、外れ馬券の購入代金を当たり馬券の払戻金から必要経費として控除できるという判断が初めて示されました。
その点で、今回の裁判事案との相違点が問題となり、東京地裁では、最高裁判決における納税者とは異なり、馬券購入に当たりコンピュータを使用していないことや、具体的な馬券購入履歴が保存されておらず、具体的にどのような馬券を購入していたかが明らかでなく、機械的、網羅的に購入していたということまでは認められず、本件納税者による一連の馬券の購入が一体の経済的活動の実態を有することまでは認められない、と判断されていました。
これに対し、東京高裁は、本件納税者は具体的な馬券の購入を裏付ける資料を保存していないものの、独自のノウハウに基づいて長期間にわたり多数回かつ頻繁にその選別に関する馬券の網羅的な購入をして、100%を超える回収率を実現することにより多額の利益を恒常的に上げていたものであるため、一連の馬券の購入は一体の経済的活動の実態を有するということができるとし、購入の方法についても独自のノウハウという点において、最高裁判決における納税者と本質的な違いはないと認定しています。
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今回の高裁事案の納税者 |
最高裁の事案の納税者 |
馬券の購入方法 |
テレビや新聞などから集めた情報をもとに競走馬や騎手等を分析評価した上で、レースごとに8つの考慮要素(馬の能力、レース展開など)に基づいた評価を行った後にレースの結果を予想して、どのような馬券を購入するのかを個別に判断して馬券を購入 |
馬券を自動的に購入するコンピュータソフトを使用して独自に条件設定と計算式をもとに、インターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目せず網羅的な購入方法で馬券を購入 |
購入金額や利益の規模 |
【購入金額】
平成17年から22年にかけて約72億7,000万円の馬券を購入
【利益】
総額5億円超 |
【購入金額】
平成19年から21年にかけて約28億7,000万円の馬券を購入
【利益】
総額約1億4,000万円 |
なお、最高裁の判決を踏まえ国税庁は、平成27年5月所得税基本通達34-1を改正し、最高裁判決と同様の行為の態様や規模等により払戻金を得ている場合は一時所得でなく、雑所得として取扱うことを明らかにしています。
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