■税務調査でのメール等調査に対する企業側の対応・・・公認会計士・税理士 吉井清信
近年、税務調査では調査官にメール等の閲覧を求められるケースが増加しています。企業側としては、メール等の閲覧はできるだけ制限したいところですが、調査官に"隠ぺい行為"と受け取られるのも避けたいところですので、実際にどこまで応じるかについて検討してみたいと思います。
1.削除したメール等が復元され、重課の対象に
まず、メールやWORD等のデータ(以下「メール等」という)が税務調査の対象となる根拠は、国税通則法上、税務当局は納税者に対し、「調査の目的を達成するために必要と認められる帳簿書類その他の物件」を検査、提示・提出を求めることができるとされ、「その他の物件」にはPCやサーバーも該当すると解釈されていることによります。
こうした中、企業側として税務調査で問題になるメール等を削除することが考えられますが、調査官が削除されたメール等の復元を試みたり、サーバーが調べられ、PC上でメール等を削除したことが発覚するケース、関係者にメール等削除を指示した事実が把握されるケースも考えられます。メール等削除が発覚した場合、隠ぺい行為として重加算税を課される可能性もありますので注意が必要です。
2.税務調査では「どこまで見せるか」かが焦点に
税務当局が国税通則法を根拠にメール等の提示・提出をもとめている以上、完全に拒否するのは難しく、あとは、「どこまで見せるか」のせめぎ合いになると考えられます。
税務当局側としては、最高裁判決(荒川民商事件)を根拠にメール等の調査範囲をかなり広げてくる可能性があります。これは、質問調査の範囲について、「質問検査の必要があり、社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限有る税務職員の合理的な選択に委ねられている」とした判決です。
これに対し企業側としては、同判決の「質問検査の必要があり」「社会通念上相当な限度にとどまる限り」という部分を取り上げ、閲覧対象となるメールの範囲や閲覧期間を制限することが考えられます。例えば、社外とのメール等には、取引先とのNDA(秘密保持契約)を結んだ要件に係るものが多数含まれ、税務調査といえども、これを第三者に開示する場合には取引先の了解が必要になり、これを無視すれば、取引先との秘密保持契約に違反することになりかねません。すなわち、メール等の閲覧を制限する正当な理由を示したうえで、「社会通念上相当な限度」について調査官と認識を合わせられるようにすれば、制限可能ということになります。
3.隠ぺいに当たらないメール等の削除とは?
最後に、税務調査で隠ぺい行為として重加算税の対象とされないためには、サーバー容量の問題や機密情報・個人情報の漏えいリスク低減を目的に、「メール等の削除に関する社内規程」を設け、機械的、一律的な削除であることにすることが考えられます。
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