「グループ法人税制」の中小企業への影響について・・・・・公認会計士・税理士 吉井清信
今回も引き続き重要な改正である「グループ法人税制」を取り上げ、特に中小の同族法人への影響を中心に説明し
たいと思います。
平成22年度税制改正により創設された「グループ法人税制」は、ここ数年間における、会社分割を利用した分社化、株式交換による完全子会社化、株式移転を用いた持株会社化など、結果として100%の親子関係が創設されるという、グループ経営の一体的経営が進展している状況を踏まえ、その経済的実態に即した課税を実現する観点から設けられたものです。
特に、中小同族法人にとって留意すべきは、完全支配関係にある法人間の資産譲渡について、「益出しや損出し」のような形で譲渡損益を計上することを規制する趣旨も含まれていると考えられるところです。
■完全支配関係の判定
グループ法人税は、資本金に関係なく、原則としてすべての法人を対象にしています。但し、グループ法人税制が適
用されるのは、100%グループ内、いわゆる完全支配関係にある法人間の取引についてです。
完全支配関係とは、@「一の者」が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する関係(以下、「当事者 間の完全支配の関係」という)、またはA「一の者」との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をい
い、この2つの内容からなっている点に留意が必要です。
■中小の同族法人への影響
「一の者」が個人であるときに、その「一の者」が複数の法人の発行済株式等の全部を保有している場合の法人相
互の関係が完全支配関係に該当するため、その法人間の取引についてもグループ法人税制が適用されます。しかも
「一の者」が個人であるときは、個人1人ではなく、その個人の同族関係者も含めて「一の者」としてとらえた上で判定
します。具体的には、その個人と次に掲げる特殊の関係のある個人も含めて一の者として取り扱います。
<特殊の関係のある個人>
@株主等の親族
A株主等と婚姻の届出をしていない事実上婚姻関係と同様の事情にある者
B株主等の使用人
C上記@からB以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
D上記AからCに掲げる者と生計を一にしているこれらの者の親族 |
(注)親族とは、民法上の親族であり、配偶者、6親等内の血族および3親等内の姻族です。
以上の通り、中小の同族法人においては、今後別会社を利用した「益出しや損出し」のための譲渡損益の計上が規
制されることに留意が必要です。
なお、グループ法人税制は、平成22年10月1日以後の取引から適用されます。
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