「贈与税の納税猶予制度」の創設について・・・・・公認会計士・税理士 吉井清信
今回は、事業承継のための「贈与税の納税猶予制度」の創設についてご説明したいと思います。
事業承継税制が平成21年度の税制改正で創設されます。平成20年度の税制改正大綱では、相続税の納税猶予制度だけが明記されていましたが、21年度の改正では贈与税の納税猶予制度も創設される運びとなりました。
この制度では、事業承継に必要とされる自社株式の贈与を、後継者である先代経営者の親族が受けた場合、贈与税の納税が猶予されます。猶予税額の納付、免除等については、相続税の納税猶予制度と同じ措置が取られますが、相違部分もありますので、注意が必要です。
贈与税納税猶予制度特有の部分は以下の通りとなります。
(1) 役員就任期間制限
後継者の要件ですが、相続税の納税猶予制度が会社の代表者であること、先代経営者の親族であること、その後 継者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超を保有し、同族内で筆頭株主になることが必要ですが、贈与 税の場合は、「20歳以上であり、かつ、役員就任から3年以上経過していること」が追加要件となります。
(2) 一括贈与と経営移譲
先代の経営者から、親族である後継者へ自社株式を贈与する際には、一括で贈与することが必要です。さらに、先 代経営者の要件については、会社の代表者であったこと、同族関係者と併せて発行済議決権株式総数の50%超の 株式を保有し、同族内で筆頭株主であったこと、という相続税の要件のほか、先代経営者が役員を退任することも 要件となってきます。
(3) 適用開始日
相続税の納税猶予制度が、平成20年10月1日以後の相続等に遡及適用されるのに対し、贈与税の納税猶予制度 は平成21年4月1日以降の贈与からの適用とされ、適用開始日が異なりますので注意が必要です。
因みに、相続税の猶予制度との共通部分の主な点は以下の通りとなります。
@ 納税猶予は発行済議決権株式総数の2/3に達する部分まで
A 経済産業大臣の確認
B 5年間の事業継続(代表者であること・雇用の8割を維持すること等)
C 資産管理会社に該当しないこと
D 対象株式を継続保有すること
以 上
|