税制改正大綱(事業承継税制)・・・・・公認会計士・税理士 吉井清信
平成20年度税制改正大綱が出されました。今回はそのうち、中小企業にもっとも重要な事業承継税制について説明致します。
平成20年度税制改正において、事業承継税制として事業の後継者を対象とした「取引相場のない株式にかかる相続税の納税猶予制度」が創設される予定です。その要旨は以下の通りになります。
イ 事業承継相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等
を取得しその会社を経営していく場合には、その事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、
相続等により取得した議決権株式等(相続等の結果、その会社の発行済議決権株式の総数等の
3分の2に達するまでの部分)に係る課税価格の80% に対応する相続税の納税を猶予する。
(注1)「事業承継相続人」とは、同族関係者と合わせてその過半数を保有し、かつ、その同族関係
者の中で筆頭株である後継者に限る。
(注2)会社を経営していた被相続人は、その会社の発行済株式等について、同族関係者と合わせ
てその過半数を保有し、かつ、その同族関係者(事業承継相続人を除く)の中で筆頭株主で
あったことを要する。
ロ 事業承継相続人が納税猶予の対象となった株式等を死亡の時まで保有し続けた場合など一定
の場合には、猶予税額を免除する。
ハ 事業承継相続人が、相続税の法定申告期限から5年の間に、事業を継続していないと認められ
る場合には、その時点で、猶予税額の全額を納付する。
ニ この特例の適用を受けるには原則納税猶予対象株式等を担保に供しなければならない。
<具体例>
被相続人が株式6億円(発行済株式の全て)保有し、事業承継相続人がすべて相続。
6億円÷3×2×80%=3億2,000万円
3億2,000万円×50%(相続税最高税率)=1億6,000万円が納税猶予 |
実際に決定されれば、中小企業にとって大変有利な改正となり、事業継承をスムーズに行うための選択肢が増えることになります。 |