連結納税制度の中小企業への利用について・・・公認会計士(税理士) 吉井清信
今回は、中小企業にとって利用の可能性が低いと認識されがちな連結納税制度について、取り上げてみたいと思います。国税庁の統計では、連結納税に係る承認申請が年々増加する傾向にあり、中堅・中小企業のなかにも適用申請するところが徐々に現れてきています。
連結納税とは、親会社とその100%子会社で構成されるグループを一つの納税単位として、法人税の申告・納税を行う制度をいいます。
連結納税の活用によって得られるメリットは、まず、連結グループ内に赤字会社と黒字会社が混在している場合、その赤字と黒字が相殺されることで、グループ全体として法人税額が少なくなるという効果が得られることです。次に、ある企業が赤字の事業部門を抱えていた場合、節税効果を考え別会社化できなかったものが、連結納税を導入すれば事業部門の責任明確化と節税効果を同時に享受でき、連結グループ内の組織再編を柔軟に実行することができることです。
一方、主なデメリットとしては、まず、親会社の有する繰越欠損金以外は連結グループへの持込が原則的にできないということです。次に、連結納税を選択すると、「やむを得ない事情がある」場合以外取り止めができないということです。さらに、別々に決算を行った上で申告書を作成することや、連結納税導入後は子会社の決算期とは別に親会社に合わせたみなし事業年度の決算を行う必要があることなど、特に親会社にとっては事務作業量が集中・増加することが避けられないということです。
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以上のデメリットはありますが、子会社を含めた複数の会社(事業)の経営を行っていて、しかも特にこれから新たに事業を立ち上げる場合には連結納税の導入は中小企業であっても十分検討に値すると思われます。
その際は、目先の繰越欠損金の切捨てのみでなく、今後の損益予測に基づく納税額をシュミレーションして有利不利の判定を行うこと、適用を受けようとする親会社の事業年度開始の日の6月前の日までに申請書の提出が必要なことから早めの決断が必要となることが、連結納税導入のポイントといえます。 |