種類株を利用した事業承継対策・・・
公認会計士(税理士)・吉井清信
昨年5月に施行された会社法により、種類株式の活用の幅が広がり、中小企業のスムーズな事業承継のために活用が期待されていましたが、相続税法上の評価方法が不明確であるため活用が進まないという問題がありました。
この点、平成19年度税制改正では、中小企業の事業承継において活用が期待される典型的な種類株式(以下の 3類型)について評価方法が明確化されています。具体的な評価方法並びに活用方法は以下の通りですので、今後の事業承継対策にお役立て下さい。
なお、平成19年1月1日以降に同族株主が相続等で取得した場合に適用されます。
(1) 配当優先の無議決権株式
原則として普通株式と同様に評価する。
但し、相続人全体の相続税評価総額が変わらないことを前提に、無議決権株式については、納税者の選択によ り、普通株式評価額から5%の評価減をすることもできる。すなわち、無議決権株式について減額された5%に ついては、議決権株式に上乗せされる。
(2) 社債類似株式(一定期間後に償還される特定の無議決権株式+配当優先株式)
以下の一定の条件を満たす社債に類似した特色を有する種類株式については、社債に準じた評価が行われる。
@優先配当、A無議決権、B一定期間後に発行会社が発行価額で取得、C残余財産の分配は発行価額が 上限、D普通株式への転換権なし
<(1),(2)の活用方法>
複数の相続人がいる中で、後継者に経営権を集中させたい場合
⇒(1)又は(2)を発行し、無議決権株式を非後継者に、普通株式(議決権あり)を後継者に相続させることで経営権 の集中と財産分配を両立させる。
(3) 拒否権付株式
拒否権付株式(普通株式+拒否権)は、普通株式と同様に評価する。
<(3)の活用方法>
事業承継後の経営安定のため、一定期間は後継者の独断専行経営を防げる形にしておきたい場合
⇒(3)を発行・保有し、後継者への権限委譲後一定期間は保有しておく。
種類 |
評価方法 |
活用方法 |
(1)配当優先の無議決権株式 |
原則として普通株式と同様に評価する。
但し、相続人全体の相続税評価総額が変わらないことを前提に、無議決権株式については、納税者の選択により、普通株式評価額から5%の評価減をすることもできる。すなわち、無議決権株式について減額された5%については、議決権株式に上乗せされる。 |
後継者に経営権を集中させたいが、複数の相続人がいる場合
⇒(1)又は(2)を発行し、無議決権株式を非後継者に、普通株式(議決権あり)を後継者に相続させることにより経営権の集中と財産分配を両立させる。 |
(2)社債類似株式(一定期間後に償還される特定の無議決権株式+配当優先株式) |
以下の条件を満たす社債に類似した特色を有する種類株式については、社債に準じた評価が行われる。
@優先配当、A無議決権、B一定期間後に発行会社が発行価額で取得、C残余財産の分配は発行価額が上限、D普通株式への転換権なし |
(3)拒否権付株式 |
拒否権付株式(普通株式+拒否権)は、普通株式と同様に評価される。 |
事業承継後の経営安定のため、一定期間は後継者の独断専行経営を防げる形にしておきたい場合
⇒(3)を発行・保有し、後継者への権限委譲後一定期間は保有しておく。 |
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