譲渡所得の計算上控除される取得費の範囲・・・・・・・
公認会計士(税理士)・吉井清信
国税庁の重要な通達の改正がありました。
1.これまでの取り扱い
不動産やゴルフ会員権を譲渡した場合には、その譲渡した資産を取得した時にかかった「通常要する費用」を控除す
ることが出来ます。
しかし、贈与により取得した資産の名義書換手数料や、相続等で取得した一定の資産に係る登録免許税等は家事
関連費とされており控除することが出来ませんでした。
2.最高裁判所の判断
今年の2月に最高裁で「贈与により取得したゴルフ会員権の名義書換手数料」について、最高裁は「通常要する費
用」として認められると判断しました。
3.国税庁による通達の改正
上記の裁判の結果を受けて本年8月15日に国税庁は改正通達を公表しました。
これによると、贈与または相続により取得した際に通常支払われる名義変更のための費用、具体的には、@不動産
の場合には登録免許税、登記に要する費用及び不動産取得税、Aゴルフ会員権の場合には名義書換手数料、B株
式の場合には名義書換手数料、について従来は認められていなかったものが、今後は必要経費として認められること
になりました。
4.解決されていない問題点
しかし、今回の通達の改正はまだまだ限定的な内容になっており、解決されていない事項もあります。
例えば、相続で生じた遺産分割のための費用や遺産分割の争いを解決するための弁護士費用や裁判費用等につい
ては明確な判断が出されていません。
実務的に、遺産分割の費用は、費用の内容によっては資産取得のための必要経費と判断される余地もありますが、
遺産分割争いは、「通常」でないとの見方から、その解決のための弁護士費用等は必要経費として認められていませ
ん。
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