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会計・税務 豆知識

相続・生前贈与の税務・・・・・・・ 税理士・吉井清信

 平成15年度の税制改正では、相続税と贈与税を一本化して課税する「相続時清算課税制度」が導入されました。これにより、生前贈与はかなり進めやすくなり、親から子への財産の移転が容易になりました。また、これまで70%であった最高税率が50%引き下げられるとともに、税率区分が変更され、相続税・贈与税共に10%、20%、30%、40%、50%の6区分となり、税率は全般的に引き下げられています。そこで、今号の特集は、これまで以上に事前の対策が重要となった相続税について、節税対策を中心にその方法と進め方を説明致します。

1 相続税対策の目的は家や会社などの財産を守ること
 獲得した利益に対してかかる所得税や法人税に対し、相続税の場合は所有する財産にかかってくるため、その財産の内容によっては税金を払えないということが少なく有りません。税金が払えないとなると、今まで済んでいた自宅や、仕事をしていた事業所を売却しなければならなくなるなど、平穏無事な暮らしを脅かされかねません。しかも、納税資金のために事後に土地や建物を売却したとしてもまた税金がかかり、節税対策をしていない人はどんどん財産が減っていくことになるのです。相続対策は、将来納めることとなる相続税をできるだけ少なくする節税対策だけでなく、相続税を納める際の資金を準備しておく納税資金対策、相続時に起こるかもしれない遺産争いを防ぐための対策(争族対策)も合わせて実施する必要があります。これが相続対策の三本柱で、これらは相互に密接に関連しています。これらの対策をバランスよく実行することにより、家や会社の財産を子孫に残すことができるのです。

2 大きな効果を上げるのは事前の対策と事後の対策の組み合わせが重要
 相続は人の死亡によって始まります。相続税対策は、相続開始前に行う「事前対策」と相続開始後に行う「事後対策」に分けられ、通常は相続対策といえば、事前対策のことをいいますが、事後(相続開始後)であっても節税対策の余地あります。それぞれの対策を大まかにまとめたのが下図です。ここで注意すべきは、多くの相続税対策は相続が開始してからでは遅いということと、効果を大きくするだけでなくリスクを分散させるためにも、多くの対策を組み合わせて実施することが重要だということです。

3 相続対策の基本的な進め方
 相続税の節税の方法は、前記のとおりですが、その進め方としては、@まず、財産の把握と評価を行いますが、評価はあくまでも相続税評価であることに留意する必要があります。A次に、現在の相続税評価額で財産を相続するとした場合の相続税を計算します。Bさらに、前記の対策の方法を財産の種類別、機関別にどんな対策によってどれだけ節税できるかを計算し、対策の実行に移します。C最後に対策実施後、相続税がいくら節税になったかを計算します。相続税額は、(a)路線価・株価の変動、(b)法律の改正、(c)資産の増減・構成の変化、(d)家族の増減などによって変わってきますので、毎年計算し、対策そのものも見直しも必要となります。Dその他、納税資金対策と遺産争い防止対策を必要に応じて、並行して行います。

4 専門家に相談しながら実施する
 最後に、相続税対策を実施するには、個別の事情に応じた専門的知識が必要になってきます。そのため、上記相続税対策の基本を理解した上で、ご自分の事情をよく理解してくれる専門家に相談することをおすすめします。

対   策

効  果

@相続税の制度の仕組みを利用する
  ・墓地や仏壇の取得
  ・生命保険金の非課税枠の利用
  ・死亡退職金と弔慰金の非課税枠の利用
  ・養子縁組により相続人を増やす
  ・配偶者の税額軽減の最大利用"

 相続財産の減少
 非課税(500万円×法定相続人)
 死亡退職金 非課税(同上)
 弔慰金 非課税(最大月額給与×6又は36ヶ月)
 1人当たり1000万円の基礎控除
 相続財産の1/2又は1億6000万円まで非課税"

A財産を生前に移転する
  ・相続時精算課税制度の利用
  ・子や孫への住宅資金の贈与
  ・配偶者への住宅の贈与
  ・毎年子や孫への財産移転の実行"

 一般の財産2,500万円まで無税
 住宅取得資金3,500万円まで無税
 1人当たり550万円まで無税
 2,000万円まで無税
 1人当たり110万円まで無税

B財産の評価額を引き下げる
  ・小規模宅地の特例を最大限受けられるための工夫
  ・セカンドハウス等は貸家にして家屋及び敷地の評価
  額の引下げ
  ・借入金による不動産取得

 居住用宅地は240uまで80%減額
 事業用宅地は400uまで80%減額
 家屋は30%差引いて評価
 敷地は18%か21%程度低く評価
 通常2〜3割評価減

@相続税の節税対策
  ・葬式費用は領収書(取れないものはメモ書)を揃える
  ・小規模宅地の有利な選択(調整単価が 高いものを優
  先して選択)
  ・土地分割の工夫(路線価の異なる2つの道路に面し
  た土地を分割)
  ・相続財産の国や公益法人への寄付

 被相続人の職業や財産などに照らして相応な程度まで
 相続財産より控除
 評価減できる金額を最大にする
 分割方法によっては評価額が半減
 相続財産の減少

A納税方法の対策
  ・延納、物納、農地の納税猶予といった納税方法の選
  択

 納税資金全体の減少

B譲渡所得税の対策
  ・売却予定の不動産は共有とする
  ・不動産の売却は申告期限後3年以内とする

 譲渡所得が共有の取得者ごとに3000万円又は1000万
 円の特別控除
 相続時に支払った相続税が譲渡した資産の取得費に加
 算される


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