「保険法」・・・弁護士・上田裕介
従前は、保険契約については、商法に規定されていました。しかし、平成20年6月6日、保険法が公布され、保険
契約については保険法において規定されることになりました。保険法は、平成22年4月1日に施行予定です。
紙幅の都合上、保険法の全てを網羅的に記載することはできませんが、注目すべきと思われる点の内いくつかをご紹介いたします。
商法においては、保険契約に関する規定は、大半が任意規定であると言われていて、保険会社の作成する約款 が、商法の規定よりも優先すると解されてきました。しかし、保険法では、保険契約の利用者保護のために、約款の規定で、保険法に反し利用者にとって不利なものを無効とする条項が設けられています。
商法では、他人を被保険者とする死亡保険契約について、被保険者の同意を要するが、被保険者が保険金受取人であればその同意を不要としています(商法674条)。保険法では、生命保険契約の当事者以外の者を被保険者とする死亡保険契約については、被保険者の同意を要する旨定められています(保険法第38条)。
商法では、保険契約者が保険金受取人を変更できるのは、契約締結時に保険金受取人の変更権を留保した場合に限る旨規定していました(商法第675条)。保険法では、保険契約者は、保険金受取人の変更権を有する旨規定しています(保険法第43条第1項、第72条第1項)。保険法は、遺言による保険金受取人の変更も認めています(保険法第44条、73条)。
商法では、被保険者が一旦同意すれば、保険契約を被保険者の意思で終了させる手段はありませんでした。保険法では、被保険者が保険契約者に対して、保険契約の解除を請求できる途が用意されました(保険法第58条、第87条)。
保険の解約返戻金請求権が差し押さえられたとき、差押債権者が、保険契約を解除することがありますが、保険金受取人が、保険給付を受ける期待を確保するために、保険契約者の同意を得て、解約返戻金相当額を解除権者に支払って、解除の効力が発生しないようにする制度ができました(保険法第60条等、第89条等)。
|