犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律・・・・・・・・弁護士・市河真吾
近時、大がかりな投資詐欺、振り込め詐欺の被害が大きく報道されていますが、その被害回復については、通常被
害者は民事事件として訴訟を起こしたりなどの手だてしかありません。
他方、組織的な財産犯においては、刑事事件として、組織犯罪処罰法で罰せられますが、同時に不正収益を没収し
たり、差し押さえたりします。しかし、その犯罪被害による財産を被害回復に当てる制度が従前不備な状況でした。報
道でもありました暴力団によるヤミ金の収益がスイス銀行にあったのですが、被害者への被害回復のため手続き上給
付できないことが問題化しました。
そこで、犯罪被害による加害者が保有していた財産を被害回復として給付できるようにするため、平成18年6月、犯
罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律が制定されました(同年12月施行)。
手続きの概要は一定の財産犯の被害者が支給申請をし、検察官の裁定により支給されることになっています。しか
し、あくまでも対象は組織犯罪処罰法上で罰せられる財産犯による場合に限られるので、犯罪被害回復としては不十
分な点があるといえるでしょう。
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