■ Web版SUM UP


気になる裁判例

「販促品持ち帰り銀行員クビは正当か?」・・弁護士・松村博文


 「おひとり様一個自由にお取りください」。
ある銀行で副店長を勤めていた女性が出勤後、近隣の携帯ショップの店頭に置かれていた販促物の洗剤を携帯ショップの営業時間前に手に取り、持ち帰った。それが、11回に及んだことが、携帯ショップからのクレームで、銀行が問題として、懲戒解雇処分に及んだ行為に対して、当該行員が懲戒解雇の違法性を争った事案である。
 銀行側が、懲戒解雇としたのは、販促物の取得は、窃盗罪に該当し、明確に法令、社会規範、行動規範に違反する」「金銭その他有価物を扱う銀行員が犯してはならない重大な非違行為」との理由であった。
 労務行政研究所が調べた令和五年四月から七月までの上場企業の従業員の問題行為に対して、具体的な処分例としては、売上金の百万円の使い込みには七五%が懲戒解雇を選択し、二週間の無断欠勤(七四%解雇)、重要な機密事項の意図的な漏洩(六九%解雇)社員割引きで買った商品のネット販売や出張旅費の上積みなどには、解雇もあったが、一定期間の出勤停止、減給、戒告まで判断が分かれていた。
 令和六年三月の東京地方裁判所の判断は、ショップの営業時間前の洗剤持ち帰りは、窃盗にあたりうるとしたうえで、業務中の窃盗でないことや、販促物がそれほど高価でないことなどから、最も重い懲戒解雇処分は、重過ぎるとして、解雇処分は、無効として、判決確定までの賃金の支払いを命じ、銀行側は控訴しなかった。
 懲戒解雇は、重大な結果を伴うことから、慎重かつ厳正に判断をすることが求められていることを示す判例である。


[ TOPページ ]  [ 業務内容・費用 ] [事業所案内 ] [SUMUP ] [ お問い合せ

  (c)copyright akasakamitsuke sogo law &accounting office. all rights reserved.