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気になる裁判例

「子の引渡しの審判に関する間接強制を権利の濫用として却下した事案 (最高裁平成31年4月26日決定)」・・弁護士・吉川 愛

 婚姻関係にある夫婦(子供3人)において、ある日夫が子どもらと共に実家に戻った事案で、審判において子らを妻に引渡す内容の審判が下されました。審判に基づき引渡しの強制執行を行おうとしたところ、子供のうち長男だけがこれを拒否し、呼吸困難に陥る事態となったことから、執行官は長男への強制執行を執行不能と判断しました。その後妻は人身保護請求手続きを行いましたが、この人身保護請求についても長男が夫と暮らしたい旨明確に述べたことから、却下されたという状況で、引渡しに対する間接強制(執行が完了するまで金銭的な支払い義務を認めて、執行を促す強制執行の方法)を再度申立てた事案です。原審では、間接強制の決定をしましたが、最高裁において本件の事案において間接強制の申立てをすること事態が権利の濫用にあたるとして、申立を却下する決定をしました。
 本件では、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる夫の行為は,具体的に想定することが困難であるという現段階の状況での申立てが権利濫用となると判断されました。とはいえ、子が引渡しを拒んでいるからといって必ずしも間接強制が権利濫用となるという判断ではありません。間接強制決定が過酷執行として許されないことが、間接強制の申立てに先行する裁判期間の判断により明白になっているような事案といえますが、審判書があるにも関わらず間接強制の申立自体が権利の濫用にあたり得るという注目すべき判断だと言えます。


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