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「一人親方等の石綿関連疾患を救済(東京高裁H30.3.14判決)」・・弁護士・高井陽子

 原告らは、建築作業に従事する中で、アスベスト粉じん曝露が原因で、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患に罹患したところ、被告国に対して、労働安全衛生法(以下「安衛法」といいます。)等の法令に基づく規制権限を適時適切に行使するべきであったのにこれを怠ったとして、国家賠償法1条1項に基づく責任を、被告企業らに対し、石綿含有建材の製造及び販売を中止する義務及び建設作業従事者に対して石綿が含有されている事実や石綿の危険性等を警告する義務を負っているにもかかわらずこれを怠ったとして、民法719条1項前段もしくは後段又は製造物責任法3条に基づく責任を追及しました。
 原審では、国の国家賠償責任は認めたものの、安衛法の保護範囲に一人親方や零細事業主は含まれないとして、一人親方等の建築作業従事者を救済の対象から除外しました。
 本件判決は、安衛法における有害物の規制や職場環境の保全にかかる規定の趣旨・目的は、快適な作業環境の形成を促進する(安衛法1条)という観点から「労働者」(同法2条2項)以外の者も含めて保護する点にあるとし、一人親方等が建設現場において重要な地位を占めているという社会的事実、一人親方等の侵害される利益の内容及び性質等を考慮すると、安衛法に基づく労働者に対する規制権限の不行使が違法となる場合、労働者とともに建設現場において、石綿粉じん曝露作業に従事する一人親方等で、労働者に保護される利益と同等内容を持つ者の利益は、国賠法1条1項の適用上、法律上保護される利益にあたると解するのが相当であるとして、一人親方等との関係でも国家賠償法1条1項に基づく国も責任を認めました。
 本件は、労働者性にこだわることなく、安衛法の趣旨・目的等から一人親方や個人事業主を救済しており、非常に画期的な判決です。


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