「親権者指定後に親権者変更の申立てがなされた際の判断基準として、親権者指定後の事情変更の有無のみならず、子の利益のために他の考慮事情を示して親権者の変更を認めた事例(福岡高等裁判所 平成27年1月30日決定)」・・弁護士・高井陽子
1 子供のいる夫婦が離婚する際には、子供の親権者がどちらになるのかを決める必要があります(民法第819条第1項)。そして、一旦定めた親権者の変更は、「子の利益のために必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。」(民法第819条第6項)と規定されています。
2 本件は、X(父)とY(母)が協議離婚し、子の親権者はYと定めたが、Yは子をXと同居するXの両親に預けたまま自宅を出ている事案です。
原審では、Yは、親権者指定後の事情の変更がないと主張し、原審はこの主張を容れて、Xの申立てを却下しました。
本件では、親権者変更の必要性につき、「親権者を指定した経緯、その後の事情の変更の有無と共に、当事者双方の監護能力、監護の安定性等を具体的に考慮して、最終的には子の利益のための必要性の有無という観点から決せられるべきものである」として、必ずしも親権者指定後の事情変更の有無のみではなく、幅広い事情を考慮して、親権者を変更することが子の利益のために必要かを判断する旨を示し、本件での親権者の変更を認めました。
3 かかる判断から、親権者の変更について、家裁実務においては、親権者指定の経緯や子の監護状況など幅広い事情を考慮して子の利益を図るための判断が求められているといえ、大いに参考になるものです。
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