「子供の事故についての親の責任(H27.4.9判決)」・・・弁護士・森 賢一
本件は,2004年,当時小学校6年生の男児が小学校校庭で放課後遊んでいたところ,蹴ったボールが隣の道路に転がり,バイクに乗った80代の男性がボールをよけようとして転倒し足を骨折した事故に関する事件です。 その後,当該男性は寝たきりとなり,約1年半後に肺炎で死亡したため,その遺族が2007年,約5千万円の損害賠償を求めて提訴しました。 裁判所は,一審,二審とも,ボールを蹴った当時小学生だった男性の過失を認め,「子どもを指導する義務があった」として,二審では両親に計約1100万円の賠償を命じました。 これに対し,両親が上告したのが本件裁判です。
本件において最高裁は,「子供の行為が及ぼした被害に対する予見可能性の有無で,親らが監督義務を尽くしたかどうかを線引きできる」とする初めての判断を示し,その上で,「両親は被害を予測できなかった」として,二審判決を破棄,両親側の逆転勝訴を言渡しました。
民法では,責任能力に欠ける子供等が事故を起こした場合,両親等の監督義務者が賠償責任を負うと定めています。この点,過去の裁判例では,子供の行為と被害者死亡との間の因果関係が認められた場合,被害者救済の観点から,ほぼ一律に親に賠償責任を認めてきました。 これに対し,本判決では,予測できない不慮の事故に近い事案では,親に責任を問うのは難しいとの判断を示したものです。 本件はあくまでも個別事例で一般化はできませんが,親の監督責任に一定の歯止めをかけたものとして,今後類似事例の裁判に影響を与えるものと思われます。
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