「忘れられる権利に関する裁判例(京都地裁平成26年8月7日判決)」・・・弁護士・森 賢一
本件は,原告が,検索サービスサイトの運営会社である被告に対し,本件サイトで原告の氏名を検索語として検索を行うと,原告の逮捕に関する事実(逮捕から約1年半が経過している)が表示されるところ,これにより原告の名誉毀損及びプライバシー侵害が行われているとして,不法行為に基づき,損害賠償金1100万円等の支払を求めるとともに,人格権に基づき,本件サイトにおける,原告が逮捕された旨の事実の表示及びウェブサイトヘのリンクの表示の各差し止めを求めた事案です。
裁判所は,?被告が本件検索結果の表示によって摘示する事実は,検索ワードである原告の氏名が含まれている複数のウェブサイトの存在及びURL並びにスニペット部分(リンクの下に表示される当該サイトの記載内容の一部)という事実であって,被告が本件逮捕事実自体を摘示しているとはいえないこと,また?仮に被告が本件逮捕事実を適示したと解される余地があるとしても,違法性阻却事由の要件を充足すること等から,名誉毀損による不法行為は成立しない等として,原告の請求を全て棄却しました。
本件で争点とされたのは,平成26年5月13日,EU司法裁判所が,インターネットにおけるプライバシーの保護のための新たな権利として認めた「忘れられる権利」(古い又は不適切な情報へのリンクを削除するよう要求する権利)であり,かかる権利は,表現の自由や知る権利等との調整が課題とされています。なお,原告は上記判決を不服として控訴しており,高裁の判断が注目されます。
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