「生物学上の父親でないことが明らかな場合における親子関係不存在確認の訴えの許否」・・・弁護士・花田行央
夫と民法772条により嫡出の推定を受ける子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明かであるなどの事情がある場合であっても,親子関係不存在確認の訴えによって,父子関係がないことの確認を求めることは不適法であると判断された事例(最高裁第1小法廷平成26年7月17日判決)。
民法772条は,父子関係の嫡出推定規定を設けており,離婚後200日以内に出生した子は,離婚前の夫の子と推定されます。このような推定規定が設けられている理由は,母子関係が出生の事実により明白であるのに比べ,父子関係についてはそれが明らかでないためです。また,父子関係を否定するためには,原則として夫のみが訴えを提起することができる嫡出否認の訴えによってしか,父子関係を否定することができません。このような制度により子の身分関係の法的安定が保持されるということになります。
近年のDNA鑑定技術の発展により,父子関係であっても,それを明かにすることが可能となり,母親方から,子が離婚前の夫との間の子ではないという訴えが多く提起されることとなりました。これに対して,最高裁は,従前通り,父子関係については,原則的には嫡出否認の訴えによってしか争うことができないと判示しました。
本判例については,家族観の相違などから賛否両論がありうるとは思われますが,子の身分関係の早期安定の観点からすれば,妥当であり,今後の実務においても意義深い判断であったと思われます。
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