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気になる裁判例

 「租税法上の住所」・・・弁護士・花田 行央

 香港に赴任しつつ国内にも相応の日数滞在していた者が,国外財産の贈与を受けた時において,相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)1条の2第1号所定の贈与税の課税要件である国内(同法の施行地)における住所を有していたとはいえないとされた事例(最高裁判所第2小法廷判決平成23年2月18日 平成20年(行ヒ)第139号)。

 本件は,上告人が,両親から外国法人の出資持分の贈与を受けたことにつき,所轄税務署長から相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの。)の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を受けたため,上告人は本件贈与時に国内に住所を有しておらず,贈与税課税要件を満たしていないから納税義務を負わない旨主張して,本件各処分の取消しを求めた事案です。

 租税法上,「住所」については,独自の定義規定が設けられておらず,いわゆる借用概念であって,その意義は民法における住所と同じに解するのが,租税法律主義や法的安定性の要請に合致するものとされています。そして,民法22条「住所」とは,形式的な基準によらず,実質的な生活関係に基づいて判断するというのが,通説・判例です。

 本判例も,このような枠組みを前提として,贈与時の上告人の住所は日本に無かったことを認定しています。本事件は,上告人の父親が消費者金融大手創業者であり,贈与税額が1000億円を超えるなど高額であったこと及び上告人の租税回避目的が明かであったことから,上告人に対する批判的風潮が強い中,最高裁が租税法律主義を貫いたことも,今後の課税実務に対して大きな意義を有すると思われます。


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