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気になる裁判例

「赤白ストライプハウス事件」・・・弁護士・吉川 愛

 表題の事件は、東京都武蔵野市で、とある有名人が建築を予定している建物の赤白ストライプの外壁部分が近隣住民の景観利益及び平穏生活権を侵害するものとして、近隣住民から建物所有者に対して建物の外壁部分の撤去と、損害賠償請求を行ったものです。

 景観利益とは、「良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益」とされており、この利益を侵害するといえるためには、その侵害行為が社会的に認容された行為として相当性を欠くことが求められています。

 今回の判決では、まず壁の色が仮に周りの住宅の色彩と調和しない、というような状況事態が、近隣住民の景観の恵沢を享受する利益と言えるのか、という点について、これについては利益と言えるとした上で、今回の地域が建物色彩についての法的規制はなく、また住民感でも色彩に関する特別の取り決めもないこと、現実に種々の色合いを有した建物も存在することを前提に、近隣住民らが建物の壁の色について景観利益を有するとはいえない、としました。

 平穏生活権については、保護される権利ではありますが、今回の赤白ストライプの外壁部分が、近隣住民の私生活の平穏ないし平穏生活権を受忍限度を超えて侵害するものではない、としました。

 今回の件では、景観利益については利益があるとも認められず、私生活の平穏権についても侵害は認められませんでしたが、判決は、場合によっては建物の外壁部分の色彩についても、景観利益及び私生活の平穏権を侵害する可能性があることを示しました。

 とはいえ、いずれも、侵害と言えるためには、色彩に関する法的規制や、住民感での色彩に関する建築協定等の取り決めなどが基本的には必要であるような内容となっており、そのような取り決めのない一般の地域では侵害を主張するのはなかなか難しい判決であるように読めます。建物を建てる側に何らかの予測可能性ができる状態であることを前提としているとも読め、建物を建てる側の利益とのバランスを図っている判決であると思われます。




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