「過払金返還請求権の消滅時効の起算点」について・・・弁護士・高井陽子
過払金とは、あなたが消費者金融等の貸金業者から利息制限法1条に規定されている利率(15%から20%)を超える約定利率で借入をしている場合に、利息制限法の定める法定利率に基づいて、あなたの返済金の利息および元本への充当を再計算した結果算出される、あなたが貸金業者に返しすぎたお金のことをいいます。そして、過払金の消滅時効期間は10年です。
これまで、この過払金返還請求権の消滅時効の起算点をいつにするかについては、判例の中でも、@過払金が発生した日ごとに、発生した日から消滅時効が進行するという考え方と、A個々の過払金が発生した日ではなく、一連の取引 が終了した時点や一連の取引関係の清算が始まった時点から消滅時効が進行するという考え方に分かれていました。
この点、@の説に対しては、貸金業者と借主との間で、当該取引の継続中に過払金が発生したとしても、当該過払金は、次の借入金の弁済に充当するという合意があった場合、借主に取引継続中に個々の過払金の返還請求をさせるのは、継続的な金銭消費貸借取引を終了させるに等しい、過払金充当の合意をした趣旨に反する等と批判がありました。
そこで、平成21年1月22日の最高裁判決は、かかる批判を反映して、過払金返還請求権の消滅時効の起算点につき、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行すると判断しました。
この判決は、裁判所の見解が未確定であった過払金返還請求権の消滅時効の起算点について、裁判所の立場を示したものとして、重要な意義を持っています。
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