「婚姻条件の国籍法違憲判決(最判平成20年6月4日)」・・・弁護士 吉川 愛
表題の判決は、日本国民である父親と、日本国民でない母親との間に生まれた子供で、生まれた後に父親から認知された子について、父親と母親が結婚することを要件としている国籍法3条1項が、法の下の平等を保証した憲法14条に違反すると 判断し、出生後、後から認知された子供も、国籍法の他の要件を満たせば、日本国籍を取得することができるとした最高裁判決です。
国籍法では、子供が生まれた時に、父、母のどちらかが日本人であれば日本国籍を取得するという、父母両血統主義を採用しています。従って、母親が日本人である場合、生まれた子供は確実に日本国籍を取得することができます。また、婚姻していなくとも、出生前に、日本人である父親が外国人の母親の子供を認知した場合、生まれてくる子供の父親が日本人であることが確定しているので、この場合も日本国籍を取得することができます。とすると、父親が認知をする場合、出生前であれば認知があればよいのに、出生後であれば、国籍法3条1項により、同じ方法では婚姻しない限り日本国籍を取得できないこととなります。
判決は、国籍の取得は、日本においては重要な法的地位であること、また、両親の婚姻は、子供の意見や努力によっては動かせない性質のものであることから、慎重に判断すべきであるとし、結論として平成17年の段階で、夫婦共同生活を営む家族生活や親子関係に関する意識が多様化していること、非嫡出子(両親が婚姻していないで、父親が認知した子)の数も増加していることなどに鑑み、婚姻を要件とする規定には合理性を見いだし切れないとして違憲と判断しました。
非嫡出子については、民法にも別の扱いをした規定があります。現代の生活スタイルの変動に伴い、これらが今後どのように考えられていくのか、興味深い判決です。
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