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気になる裁判例

「取調べ状況を録画したDVDの証拠価値(東京地裁平成19年10月10日」・・・弁護士 中島徹也

 刑事裁判においては、任意性のない自白を証拠とすることは禁止されています。このため、捜査段階の自白の任意性が争われることが多いのですが、被告人と取調官の供述・証言で取調べ状況を再現するという方法によらざるを得ず、水掛け論に陥りがちでした。

 この点、近時、任意性を立証する証拠として注目されているのが、取調べ状況を録画したDVDです。

 本件では、保険金殺人等の共謀を認めた自白調書の任意性の存否が争点となり、検察側から任意性を立証する証拠として取調べ状況を録画したDVDが提出され、その証拠価値が争われました。

 東京地裁は、このDVDは、弁護側が問題視する自白に至る経緯を撮影したものではなく、自白に転じた時点よりも約1か月後に、約10分の間、被告人が自白理由や心境等を簡潔に述べているのを撮影したものに過ぎないのであって、任意性を立証する有用な証拠として過大視することはできないと判断しました。

 「取調べの可視化(録音・録画)」を求める声は強く、検察庁も、取調べのうち相当と認める部分の可視化を試行しています。しかし、検察官の裁量による部分的な可視化では、かえって取調べ状況についての誤った判断につながる危険すらあります。この裁判は、こうした危険のあるDVDについて、証拠価値の判断を事案ごとに慎重に行う必要性を示している点で重要な意義があるといえます。


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