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気になる裁判例


「死亡した男性の保存精子を用いて授かった子に家を継がせることが出来るのか?」 ・・・ 弁護士・小畑雄一郎

 この点に関して、最高裁は、「男性の死亡後に当該男性の保存精子を用いて行われた人工生殖により女性が懐胎し出産した子(以下「死後懐胎子」という。)と死亡した父との間の法律上の親子関係の形成は認められない」と判断しました(最二判一八・九・四)。

 事実関係は、以下のものです。夫婦で不妊治療を受けていた男性Xが、白血病の手術に伴う放射線照射により無精子症になることを危惧して、予め精子を冷凍保存しました。その手術直後にXは、両親に、「自分に何かあったときは妻に保存精子を用いて子を授かり、家を継いでもらいたい」との意向を伝えました。手術が成功し、冷凍保存した精子を用いて体外受精を実施しようとしたところでXが死亡してしまいました。そこで、妻は冷凍保存した精子を用いて体外受精を行い懐胎した子をXの死亡後599日目に出産しました。この子がXの子であることについて死後認知(民法七八七条)を求めたというものであります。

 この話だけを読むと、認めてあげてもいいのではないか?と感じるかもしれません。
 しかし、懐胎の時点で既に父が死亡しているので、親権・扶養・相続といった法律上の父と子の間に生ずる基本的な法律関係が死後懐胎子には生ずる余地がない以上は、現行法制度下においては、この判例の結論もやむを得ないものなのです。

  ただし、前記判例は「立法によって解決されるべき問題である」とも判断しています。よって、今後、生命倫理や社会一般の考え方に変化が生じ、世相を反映した新法が制定されて結論が変わる可能性もあるでしょう。



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