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気になる裁判例

不実の登記の有効性・・・ 弁護士・市河 真吾

 土地等の不動産売買では、代金決済と同時に登記の移転がよく行われます。登記がなければ利害関係を有する第三者に自分が所有者であるという主張ができません(民法177条)。

 もちろん、これは有効な不動産売買契約が存在することが前提であり、売買契約が存在しないで勝手に権利証や実印等を悪用され登記されてしまうことがあります。売買契約による所有権移転という実体がないので、これを不実の登記といいます。このような不実の登記をした者に対して、真の所有者は、登記抹消請求ができるのが原則です。

 もっとも、注意すべきは、真の所有者が権利証や実印等を自ら渡し、漫然とこれを長期間放置し、預かった者が勝手に登記し、これを信頼した第三者(善意無過失)が登記を移転した場合は、例外的に、真の所有権者は登記抹消請求ができません。

 つまり、この場合は登記は有効とされ善意の第三者が保護されます。最近の判例でも、類似の事案で真の所有者であった者が、不実の登記が作出されたことについて「自ら外観の作出に積極的に関与した場合やこれを知りながら放置した場合と同視し得るほど重いものというべきである」として、民法94条2項、110条の類推により善意無過失の第三者を保護しています(最判平成18年2月23日最高裁ホームページ)。登記移転手続きに必要な権利証、実印、印鑑登録証明等を他人に預ける場合は十分注意すべきです。


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