建物所有目的の土地賃貸借契約における賃料を減額しない旨の特約の効力・・・・・・・・・
弁護士・河井匡秀
建物所有目的の土地賃貸借契約において、賃料を減額しない旨の特約がある場合について、平成16年6月29日の
最高裁判決は、@借地借家法11条1項の規定は強行法規であって、特約によってその適用を排除することは出来ない
、A従って、特約が存在することによって、賃料減額請求権が行使できなくなることはない、と判示し、賃料を減額しない
旨の明示の特約があっても、賃料減額請求権は行使できるとの判断を示しました。
しかし、同最高裁判決は、賃料を減額しない旨の特約が契約締結当初の賃料額を決定する際の重要な要素となった
事情がある場合には、衡平の見地に照らし、借地借家法11条1項の規定に基づく賃料減額請求の当否、相当賃料額を
判断する場合における重要な事情として十分に考慮されるべきであると判示しています。
この判決は、建物使用目的の賃貸借契約において、明示的に賃料を減額しない旨の特約、合意があったとしても、賃料減額請求権の行使が認められることを示した点に意義が認められます。
他方、賃料減額請求権の行使の際に、賃料を減額しない旨の特約の存在は、行使の要件を充足するかどうかの判断
に影響を与えることもありますから、注意が必要です。 |