入学金返還−東京地方裁判所平成15年10月23日判決
・・・・・・・・・ 弁護士・市河真吾
私立の大学、高校、中学のほとんどが入試の合格者に対し、入学金と授業料の一部を前払いさせます。その際、学校側は一度納付した入学金等は一切返還しないという不返還特約を募集要項に記載し、合格者が入学を辞退しても入学金や授業料の返還は従来は行わなかったのです。
しかし、他の学校への入学や経済的事情等から入学できなかった場合に、返還が一切なされないというのはおかしいということで、近年、全国各地で、返還訴訟が提起されました。
法的には不返還特約が、公序良俗に反し民法90条違反として無効になるか、消費者契約法の適用により無効になるかなどが争われています。各地の地方裁判所では、入学金返還は否定し、授業料の返還は肯定しているものが多いです。
かかる状況の中、東京地方裁判所は、平成15年10月23日、入学金返還請求を棄却する判決を下しました。入学金は、正規に生徒としての資格を取得できるという強固な契約上の地位の取得に対する対価であり、かつ入学金不返還の特約は無効ではないというのです。この判決以降、各地の裁判でも入学金返還請求否定の判断が定着しつつありますが(京都地判平成15・12・24、大阪地判平成15・12・26等)、授業料の返還は認められても入学金の返還を一切認めないというのでは、経済的理由で辞退した合格者に酷となるでしょう。最近出た判決(東京地判平成16.3.22)では、入学金も不相当に高額な場合は、授業料と同じ性質をもつ可能性が高いとされ、入学金返還の可能性が示唆されています。最高裁の明確な判断が望まれるところです。 |