年少者の男女格差 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
弁護士・田原 緑
女子年少者の逸失利益について全労働者の平均賃金を基礎として算定された裁判例(東京地判H13.3. 8)11歳の女子小学生が交通事故で死亡。遺族が加害者に対して損害賠償の請求をした事案で、逸失利益(生存していれば将来にわたって得られたであろう利益)算定のための基礎収入として、男女を併せた全労働者の平均賃金を用いるべきであるという判断がなされました。
これまで、このような事案においては,女子労働者の平均賃金を基礎収入として用いるのが実務の慣行でした。
しかし、男女雇用機会均等法の制定により女性の社会進出が顕著になり、それに伴って労働基準法、男女共同参画社会基本法等、各種法律が整備されるなど,女性が男性と同等に扱われる社会的基盤は醸成されつつあります。この裁判例は、このような流れを背景に、年少者の男女格差を解消しようとしたものであるといえます。
近頃、同様の判断をする裁判例も散見されるようになりましたが、(東京高判H13.8.20(本件の控訴審判決)、大阪高判H13.9.26など)他方、従来どおり女子労働者の平均賃金を基礎収入とすべきであるとする裁判例もあり(福岡高判H13.3.7)、今後の判例の動向が注目されるところです。
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