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「会社の少数株主の排除」・・・ 弁護士・吉川 愛
もともと友好関係にあった友人が亡くなり、その子供が、私が代表者であり、支配権を持つ会社の株式を相続しました。持ち分は3%と少ないのですが、いろいろと言ってくるので株主から排除したいと考えています。
株主は、その保有比率により様々な権利が認められています。自益権と共益権と区分されることが多く、自益権は株主配当を受けたりする権利、共益権は、会社全体の利益に関わる権利と位置づけられています。自益権は単独株主にも認められていますが、共益権は保有比率が大きくなればなるほど、会社の経営の根幹にかかわる権利を有していくことになります。単独株主や少数株主にも一定の共益権が認められています。1株のみを有している単独株主であっても、要件がさらに付与されることもありますが、一定の書類の閲覧請求や、株主代表訴訟などが認められています。1%の株式を保有している場合にはさらに権利の範囲が広がり、3%を保有している場合には会社の帳簿閲覧請求、役員の解任請求、株主総会の招集請求などが認められており、一定の経営に関与することが可能になっています。なお、いずれも保有期間など別途要件が課されていることがあるのは同様です。
3%の株式を保有する株式を有する株主に相続が発生した場合、上記のような株主の共益権の行使をすることが可能ですので、友好的な株主でない場合、排除したいという大株主かつ経営者の相談者様の思いは理解できるところではあります。任意で買い取りに応じてくれるのであればそれに越したことはありませんが、それが叶わない場合、会社法上、少数株主の排除の方法としてはいくつかの方法が検討できます。相談者様が3分の2以上の株式を保有している場合には、特別決議による可決が可能ですので、全部取得条項付種類株式に既存株式を転換し、全部取得条項付種類株式を会社が全部取得する株主総会の特別決議をすることによる方法が考えられます。また、同じように株式を併合することにより、3%の保有株主の株式を1株未満とすることで、議決権行使する権利を排除することも検討できます。
さらに、相談者様が90%以上の株式を有する大株主である場合、特別支配株主による株式売渡請求の方法によることも検討できます。
その他、株式併合や吸収合併のような手続きも検討できる場合もありますが、いずれの手続きを検討するにしても、会社法上少数株主の保護のための規定が設けられており、会社法及び同規則で定められている手続きを適切に行わなければなりません。
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