「テレワークと労働時間」・・・ 弁護士・関 友樹
私は会社を経営しています。ところで昨今の時世から、私の会社でもいわゆるテレワークの導入をしようと考えています。テレワークを導入するにあたって労働時間はどのように管理すれば良いのでしょうか。なかなか時間管理が難しいですが、従業員が所定労働時間を超えて労働したとして時間外賃金など支払わなければならなくなることがあるのでしょうか。
テレワークは多様な人材と能力発揮を可能にする手段として期待され、その普及促進のためガイドラインが平成30年2月22日、改定されました。テレワークで特に問題となるのはおっしゃるように、労働時間管理の方法です。方法としては、@通常の労働時間法制に基づく労働時間管理、A事業場外みなし制の利用、B裁量労働制の3つの方法が考えられます。その中でも実務に適応すると思われるのが、Aの事業場外みなし制になります。
在宅勤務(テレワーク)は、労働者が自宅で行う労働形態であり、起臥寝食等私生活を営む場所であるため、1つの事業場と判断されることはありません。したがって、在宅勤務は、本来労働者が所属する事業場の外で仕事をしているということになります。そこで、労働時間を管理するにあたって、労働基準法38条の2ののみなし労働制を適用することが考えられるのです。
従来厚生労働省は、在宅勤務のみなし労働時間制の適用には消極的でしたが、「情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条のAの適用について」という通達を発し、@「情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと」、A「随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと」の2つの要件を満たす場合には、特に使用者が労働時間を算定できると認められる事情がない限り、事業場外みなし制の適用が認められるのです。かかるみなし制の効果として、「所定労働時間労働したものとみなす」とされ、使用者の労働時間把握義務が免除され、みなされた労働時間より長時間労働したとしても、みなし労働時間以上の賃金を支払う必要がなくなるのです。ここでいう「みなす」は、反証を許さない強い効果です。
なお、@の要件は情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がないことを指し、黙示の指示も含みます。また、Aの「具体的な指示」には、当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することや、これらの基本的事項について所用の変更を指示することは含まれないとされています。
以上より、御社としてはまずテレワークの導入にあたっては、これまで述べてきた事業場外みなし制の適用を前提に就業規則の整備を行い周知徹底することが重要です。ただし場合によっては不利益変更と捉えられる可能性も存在するため、専門家に相談しながら導入を進めることをお勧めします。
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