「相続人でない者の貢献(特別寄与者による特別寄与料請求)」・・・ 弁護士・関 友樹
私は旦那の家に嫁いでから長年にわたり家業を支えてきました。この度旦那の父(義父)が亡くなったのですが、亡くなるまでも義父の介護にもあたってきました。私の義父に対する家業や介護での貢献は、義父の相続の中で評価されないのでしょうか。その他、私には何かしらの請求をすることはできないのでしょうか。
1 あなたは、義父の子ではなく相続人ではないので、義父の相続において、何かしらの権利を主張できないのが原則です。しかし、本件のように、家業を支えてきたことや、療養看護をしたことについて、相続人でないために何ら対価を得られないことが不均衡であるため、救済が得られないかが問題となります。
2 まず、被相続人に対して療養看護等の貢献をした者が相続財産から分配を受けることを認める制度としては寄与分の制度があります。しかし、寄与分も相続人のみに認められているため、やはり相続人ではないあなたが寄与分を主張することもできないのが原則です。
従前の下級審の裁判例では、夫の寄与分の中であなたのような妻を「相続人の補助者」と捉えることで、「相続人の寄与分」の中で考慮する余地が認められてきました。しかし、たとえば推定相続人である夫が被相続人よりも先に死亡していた場合には、こうした裁判例の考えによっても、相続人が存在しないため、あなたの寄与行為はやはり考慮することができません。
3 それ以外の法的手段として、?特別縁故者の制度、A準委任契約に基づく請求、B事務管理に基づく費用償還請求、C不当利得返還請求が考えられます。しかし、?は相続人が存在する場合には用いることができませんし、AからCの請求のいずれについても、その成立が認められない場合や、成立するとしてもその証明が困難であるという問題があります。
4 そこで、改正相続法では、相続人ではない者が被相続人の療養看護に努めるなどの貢献を行った場合に、相続人ではない被相続人の親族が、相続人に対して、その貢献に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができるとする特別の寄与の制度が新設されました。
したがって、義父が亡くなったのが、施行日の令和元年7月1日以降であれば、特別寄与者による特別寄与料の請求(民法1050条1項)によることが考えられます。ただし、かかる特別寄与料の請求は、?特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6か月以内及びA相続開始の時から1年以内にしなければならないとされ(同条2項)、厳しい期間制限が課されています。そのため、かかる請求をしようと考えたときには既に除斥期間(最長1年)が経過しており、家庭裁判所への申立ができなくなってしまっているという事態も想定されます。この場合は、結局従前のような「相続人の補助者」と捉える裁判例の扱いを前提に夫の寄与分の中で考慮する方法を取らざるを得ず、かかる従前の裁判例の扱いが排除されないかも今後の実務に委ねられています。
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