「協議離婚に伴う子の養育費」・・・ 弁護士・高井陽子
Aさんは、夫からの家庭内暴力に耐えられず、夫に離婚を申し入れました。その際、一刻も早く離婚を成立させたかったので、夫の提示する条件のまま、子供の養育費について、非常に低い金額で合意をしてしまいました。
しかしながら、子供が成長するにつれて、子供にかかる費用も増えてきて、生活に困窮する状況が続いています。このような場合、Aさんは、元夫に、養育費の増額を求められないのでしょうか。
父母が協議による離婚をする場合には、子の親権者を定める必要があり(民法第819条1項)、子の監護に要する費用(養育費)の分担その他子の監護について必要な事項は、その協議で定めるとされています(同法第766条1項)。養育費等に関する協議が調わないときは、家庭裁判所がこれを定めることになりますが、家庭裁判所は、必要があると認める場合には、子の監護するべき者を変更し、その他子の監護について相当な処分を命じることができます(同法第766条3項)。そして、一度決めた養育費の変更についても、子の監護についての相当な処分に含まれますので、家庭裁判所は、必要があると認める場合には、養育費の変更をすることができます。
そこで、本件では、養育費の変更をする必要があると認められるかが問題になります。
そもそも養育費は、父母それぞれの収入や子供の年齢・人数等を考慮して算定されるのが一般的です。
この点、本件は、Aさんが離婚を成立させるために、非常に低い金額で合意したとのことですので、Aさんの元夫の収入やAさんの収入等から算定される養育費より相当低い金額での合意をしたと思われます。
また、本件では、養育費を決める際に、Aさんは、夫の家庭内暴力から逃れるために、やむを得ず低い養育費で合意したとの事情や子の成長に伴って学費等子の生活に必要な費用が増加している事情があります。
これらの事情を考慮すれば、Aさんが元夫と合意した当初の養育費は、初めから不当であって是正を要するものであり、養育費の変更をする必要があると認められると思われます。
したがって、Aさんは、Aさんが本来請求できる養育費の金額を算定して、家庭裁判所に養育費の増額を求める調停の申立をされたら良いと思います。
その際、Aさんと元夫との関係に応じて、Aさんの身の安全を守る必要もあると思いますので、心配な点があれば、遠慮なく弁護士にご相談ください。
ところで、家庭裁判所は、上述のような場合の他にも、事情の変更がある場合には養育費の増額・減額を認めています。養育費は、子供のための費用ですから、常に子供のためを考えてご検討いただきたいですが、養育費の支払い期間は長期間になることも多いので、その間、元夫ないし元妻の収入の増減や再婚等の事情の変更が生じることもあるかと思います。また、子供の成長・進学に伴う事情の変更が生じることもあると思います。
これらの場合、具体的事情によって、養育費の変更が認められる事情の変更にあたるかは判断が異なりますので、ご自身の場合がどうか気になられた場合には、弁護士にご相談ください。
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