「高騰するe-sportsの大会賞金と法律」・・・ 弁護士・齋藤崇史
競技人口、全世界3.5億人のe-sportsですが、あるクライアントから、「あの著名な食品会社がスポンサーになってもらえることとなり、賞金総額1億円のe-sportsの大会を主催したい」との相談を受けました。ところが、出場者からのエントリーフィーを賞金に用いる場合、刑法で犯罪とされる賭博行為に該当してしまいます。また、不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる景品表示法)では、懸賞の上限はわずか10万円と規程されております。世界では億単位の賞金の大会が複数開催され出しており、オリンピック種目にも追加検討されているe-sportsですが、果たして日本では、賞金10万円の大会しか開催できないのでしょうか。
まず、賭博行為に該当するか否かですが、e-sprotsは会場等で行われる場合と、オンライン実施の場合等があります。前者の場合、出場選手からのエントリーフィー、及び来場者の入場料、観賞料等を設定する場合があります。その際、出場選手からのエントリーフィーを賞金として用いてしまうと、賞金を得る目的でエントリーフィーを支払う行為が賭博行為に該当する可能性があります。会場実施の場合、これらの賭博行為に該当しないよう設計、運営することが求められます。
また、PCやスマホアプリ、PS4などでのオンライン開催の場合、全世界からエントリー可能でエントリーフィーを取らないのが一般的ですので、賭博行為該当性は生じない可能性が高いでしょう。
また、アプリの取得は多くの場合、無料ですし、特定のチャネルでの生中継や、Youtubeなど動画投稿サイトでの視聴も一般的にはサイトの登録料を除けば、無課金で行われることが多く、賭博行為該当性は低いでしょう。
以上より、賭博行為に該当しないのが大半かと思います。
次に、賭博行為に該当しないとして、賞金が景品表示法の規程する懸賞に該当し上限が10万円となってしまうか、という点です。
景品表示法の所轄官庁は消費者庁ですが、賞金が景品表示法の規制対象となるか、企画段階で協議し回答を求めること(ノーアクションレター)ができます。
今回はこの制度を用いて、結果的には景品表示法の規制対象とならないよう大会を設計、運営することで、賞金総額10万円を大きく超えるe-sportsの大会を主催することができることとなりました。
消費者庁のご担当者はe-sportsはおろか、アプリについての知識も乏しかったため、そもそもアプリとは、課金要素や取引該当性、興行製などについて懇切丁寧に説明し、当方の意向を理解してもらった上で、法令解釈摘要、該当性の判断を回答いただきます。
そのため、私達弁護士もクライアントの要望や企画の詳細、構造、ビジネスモデルを正確に把握しなければなりません。
そのためにも、日頃から皆様の行っている事業、計画している新規事業、法的リスクの洗い出し等、様々コミュニケーションを取らせていただくことが不可欠です。皆様のお考えと、私どもとの知識や調査を基に、相談の際、色々と考えていただくことも有意義だと思います。
誠心誠意、ご提供させていただきますので、少しでも不安や疑問に思うことがございましたら、いつでもお問い合わせ下さい。御連絡お待ちしております。
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