「夫からの暴力(DV防止法)」・・・ 弁護士・高井陽子
私には、別居をしている夫がいます。私は、夫から度重なる暴力を受けていたため、夫が不在の間に家を出ました。ようやく私の生活が落ち着いてきたところ、知人から、夫がどこからか私の居場所を突き止め、私に会いに行く等と言っている話を聞きました。私は、夫が私の家まで来てしまうのかと思うと気が気ではありません。
今後は離婚をしたいと考えておりますが、まず先に今の生活を安定させるべく、夫への恐怖から解放してほしいと思っています。
相談者のように夫からの暴力から逃げている場合、まずは警察に相談することが先決ですが、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)に基づく保護命令を受けることが有効だと考えられます。
DV防止法に基づく保護命令には、@被害者への接近を禁止する命令、A被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令、B被害者への電話・ファックス・電子メール等を禁止する保護命令、C被害者の未成年の子への接近禁止命令、D被害者の親族への接近禁止命令があります。
本件で有効だと思われる@被害者への接近を禁止する命令は、命令の効力が生じた日から起算して6か月間、被害者の住居、その他の場所において被害者の身辺につきまとい、または被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近を徘徊してはならないとするものです。
同命令が発令されるためには、@申立人が配偶者から身体に対する暴力を受けた被害者であること、A申立人が配偶者から更なる暴力によりその生命または身体に重大な危害を受ける恐れが大きいこと、又は、@申立人が配偶者から生命等に対する脅迫を受けた者であること、A申立人が配偶者から受ける身体に対する暴力によりその生命または身体に重大な危害を受ける恐れが大きいことが必要になります。
更に、同命令が発令されるためには、B申立前に、被害者が各県にある配偶者相談支援センター又は警察の職員に対し、相談又は援助を求めた事実があることが必要になります。したがって、かかる観点からも、相談者には、早急に近隣の警察等に相談に行かれることを勧めます。もし、かかる相談の事実がない場合には、相手方からの暴力を受けた状況などの所定の事項を記載した宣誓供述書(公証役場の公証人の前でその事実が真実であると宣誓したうえで署名捺印した証書)があることが必要になります。
@及びAの要件を立証する証拠としては、過去の暴行によるけがの状況が分かる写真や診断書、相手方からの脅迫的なメール等があれば有力です。しかしながら、これらの直接的な証拠がある場合は、決して多くありません。その場合は、ご本人や目撃者等第三者の具体的な陳述書を作成して立証することになります。
なお、DV防止法に基づく各保護命令は、配偶者がこれに違反した場合に1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
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