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「不動産仲介手数料の報酬請求」・・・ 弁護士・吉川 愛

 不動産の購入を検討して、仲介業者と不動産仲介契約に印鑑を押しました。仲介業者の担当の方がいろいろと物件を紹介いただき、ある物件を購入することとしました。当初からローンを組む予定にしており、その前提で売買契約を結びました。しかし、予想外にローンの審査が通らなかったため、契約を解除せざるを得なくなりました。仲介業者からは、契約を解除した場合でも仲介手数料を支払うことを求められました。お支払しなければならないでしょうか。

 不動産仲介契約に基づく仲介手数料は、不動産売買の契約が成立したことに対する報酬で、当事者間に売買契約が成立して初めて委託者に報酬支払義務が発生します。不動産仲介業者は、宅建業法上の免許を受けたもののみが行える仕事で、不動産取引に関する専門的な知識を持った業者が、一般人を含む売買の当事者に対して適正な不動産取引がなされるよう配慮する注意義務が課されています。一般の方は不動産の売買をする機会はそう多くはなく、また高額な取引であることが多いこともあり、不動産売買の際には、トラブルを防止し、安全に不動産を売買することができることを期待して、手数料がかかっても仲介業者に依頼することがほとんどではないかと思われます。このような背景ですから、不動産業者には、物件の権利関係の調査、説明、取引の際のリスクや損害防止のための助言・指導をする義務があります。

 そして、不動産の購入の際、住宅ローンを組む場合は、売買契約の際、住宅ローンの審査が下りなかったときに、契約を損害金を支払わずに解除できる、住宅ローン特別条項というものが存在し、住宅ローンを組むことが分かっている場合にはこの条項を入れることを検討することを助言すること、ローンが組めなかったときに、その受託ローン特別条項に従って適切な解除手続きをとることを指導することは、仲介業者の注意義務の中に含まれているとされています。

 また、仲介業者の注意義務違反によって売買契約が成立に至らなかった場合や、仲介契約上の義務を果たしていない場合には、仲介手数料の支払いは認められないことがあります。

 本件において、住宅ローン特別条項により、契約が白紙撤回できたという場合には、契約内容にもよりますが、通常は仲介手数料の支払い義務は発生しないことが多いです。住宅ローン特別条項の説明がない場合や、説明をされたが特別条項の利用方法について適切な指示がなく、結局解除の際に違約金を取られるようなことがあった場合には、契約内容がどうなっていても、仲介業者の注意義務違反により、仲介手数料の請求は認められない場合が多いでしょう。仮に契約書上認められることとなっても、注意義務違反による損害賠償請求(手付金の支払い分など)と相殺できることとなる可能性が高くなると考えられます。

 不動産は高い買い物になります。売買契約はもちろん、仲介契約にも注意して契約書を確認することをお勧めします。


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