「死後相続の遺言書について」・・・ 弁護士・森 賢一
私は,妻と子供2人の4人家族ですが,私の死後相続で紛争とならないように,遺言書を作成することを考えています。遺言にはどのような方法がありますか。
民法は,遺言の(作成)方式として,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言,危急時遺言,隔絶地遺言を定めています。一般的には,自筆証書遺言,または公正証書遺言の方式が利用されます。自筆証書遺言とは,遺言者が,自筆にて作成する遺言です。費用をかけずに簡単に作成できますが,他方で紛失や第三者による変造,記載内容の不備により無効となるリスクもあります。また,公正証書遺言とは,公証人が作成する遺言です。公証人が作成するので,自筆証書遺言のように方式違反で無効となることはなく,遺言書の原本を公証人が保管するので紛失のリスクもありません。他方で,作成費用や証人2人以上の立ち会い等が必要となります。
遺言は,相続に関することであれば何でもできるのでしょうか。
遺言は,民法等の法律に定められた内容についてのみできます。具体的には,相続に関する事項(相続分,遺産分割方法の指定等),相続財産の処分に関する事項(遺贈等),身分に関する事項(子の認知等),遺言の執行に関する事項(遺言執行者の指定等)等です。この点,例えば,遺言書に「私の死後は,家族が互いに助け合って協力して暮らしてください」と書くこと自体はできますが,法律上は遺言として何らの法的効力もありません。
いったん作成した遺言は変更できないのでしょうか?
遺言者が生きている限り,いつでも遺言の変更はできます。例えば,自筆証書遺言の内容を取り消したい場合には,作成した遺言書を物理的に破棄すれば足ります。または,新たな遺言書を作成し,当該遺言書中に,「従来の遺言書の全部若しくは一部を撤回する,又は変更する」旨を記載することでも撤回又は変更できます。他方で,公正証書遺言は,原本が公証役場に保管されるため,破棄はできません。そのため,上記のように,従来の遺言書を撤回又は変更する旨の新たな遺言書を作成する必要があります。また,遺言書が複数存在し,その内容に齟齬がある場合には,作成日が新しい遺言書の内容が原則として優先されます。
遺言書はどのように保管しておけばいいのでしょうか。
自筆証書遺言は,一般的には,配偶者や子等の相続人,遺言執行者,弁護士等に預けたり,金融機関の貸金庫等を利用したりすることが多いです。なお,公正証書遺言は,遺言書の原本が公証役場に保管され,遺言者にはその正本及び謄本が交付されます。
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