「内縁の配偶者と法律問題」について・・・ 弁護士・花田行央
私には,20年来,同居をしているパートナーが居ます。お互い,特に入籍にこだわることもなかったので,婚姻届は出していません。このまま婚姻届を出さない場合,法律上はどのようなことが問題となるのでしょうか。
1 法律上,内縁関係が認められるのは,どのような場合ですか
まず,法律上,内縁関係にあると言えるには,婚姻意思と事実としての夫婦共同生活がある必要があ ります。
2 内縁関係が認められる場合,どのような効果が発生しますか
内縁関係が認められる場合,法律上,または,判例上,その関係が保護されることとなります。
例えば,仮に,相手に,突如,内縁関係を解消された場合,婚姻予約の不当破棄による破棄者の損害
賠償責任が認められる場合があります。また,内縁の配偶者にも財産分与請求権が認められるという
のが,通説的見解です(東京家審昭和31.7.25等)。
社会保障関係法の分野でも内縁の配偶者は「婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にあ
る者」として,遺族補償等を受けることができ,法律上の配偶者と同様の取扱いを受ける場合が多いで
す。その他にも,内縁の相手方名義で家を借りている場合,仮に相手方が死亡しても,借家権の承継
(借地借家法36条1項)が認められます。
このように内縁関係は,法律上,婚姻関係と同様の法的効果が発生する場合があり,その関係は相
当程度,保護されていると言えます。
3 内縁関係が認められても,法律上の効果が発生しないのは,どのような場合ですか
一方で,内縁関係が認められても,法律上の効果が認められない場合があります。まず,内縁の配
偶者には,相続権がありませんので,相続ができません。
ただし,この場合,特別縁故者として,財産を承継しうる場合があります(民法958条の3)。
また,刑法や税法といった画一的な判断が必要とされる分野については,内縁関係における効果が
発生しないものが多いです。
刑法で言えば,親族相盗例の適用がありません。この点について,過去のSUMUP18号気になる裁
判例で取り上げられていますので,そちらをご参照ください。
税法で言えば,所得税法における配偶者控除(所得税法2条1項33号,同83条),相続税法におけ
る配偶者の税額軽減(相続税法19条の2),夫婦間での一定の場合の資産贈与に関する非課税特例
(相続税法21条の6)の適用がありません。また,内縁の配偶者が相手方から,遺贈により,遺産を取
得する場合も多いと思いますが,内縁関係が認められることによる優遇措置は特にありません。法定
相続人法定相続人以外の者が遺贈を受けた場合と同様,相続税の申告義務を負います。
この点,相続税法上,配偶者には,種々の優遇措置が存在することと比較すると,内縁の配偶者は保
護されていないと言えます。
このように,特に税法上は,内縁の配偶者に厳しい取扱いがなされているのが現状ですので,その
点,ご注意ください。
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