「遺言書の取り扱い」について・・・・・・・・・・・ 弁護士・吉川 愛
父親が死亡して暫くたった後、遺品を整理していたら、遺言書と書いた封筒を見付けました。私は長男ですが、
母親と兄弟二人がおります。長男として遺言書を開封し、まず内容を確認してもよいでしょうか。今後この遺言書
をどのように扱えばよいのでしょうか。
遺言書を発見した場合で、その遺言書に封がされている場合、どのような立場の人間であろうとも、勝手に開封
することは許されていません。あなたが遺言書を発見した場合、まず、その遺言書を家庭裁判所に提出して、検認
の手続を経る必要があります。場所は、無くなったお父様の住所地にある家庭裁判所であるのが原則です。これ
を怠り、勝手に開封して中身を見たりすると、5万円以下の過料に処せられる可能性がありますので、注意してくだ
さい。また、遺言書の存在を隠したり、勝手に書き換えたりしたような場合には、相続人としての地位を失うことに
なります。
裁判所で検認の手続を得た上で、次にあなたが行うことは、遺言書の中身を確認することです。今回の場合はお
父様が自分で書いたものですので、自筆証書遺言という扱いになります。自筆証書遺言は、遺言者が原則自筆で
全ての遺言の内容を記載していること、日付、氏名が記載されていること、押印がされていることが必要であり、こ
の一つでも欠けていれば正式な遺言書としては認められません。
ですので、あなたは開封された中身が、形式的に遺言書として有効かどうかをまず確かめることになります。な
お、ワープロで書かれている遺言書は無効ですが、遺言者が他人に手を支えられて記載したような遺言書や、日
付がはっきり書かれていなくとも、遺言書成立の日が一見して明らかである内容が含まれていれば有効になる可
能性もあります。内容に疑義があるような場合には、検認手続後、まず弁護士等専門家に相談しましょう。
検認手続を経て、遺言書が有効であることが確認された場合、その遺言書は亡きお父様の最終の意思であり、
最大限尊重されなければなりません。相続人全員に遺言書の存在を伝え、遺言書の内容を優先して、その遺言
書通りに遺産分割の手続を進めましょう。
なお、既に家族の間で、遺言書が見つかる前に相続の手続を話しあいで済ませていたような場合でも、後日遺
言書が発見された場合、その遺言書の内容に反する部分の遺産分割の合意は無効となります。但し、相続人全
員がこの遺言書を前提としてもなお、既に決めた遺産分割の内容でよい、と考えている場合には、改めて遺産分
割の協議を行わなくてよい場合もあります。ここまで来ると、一度は専門家に相談する必要があるでしょう。
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