「「更新料・家賃保証」」・・・・・・・・・・・ 弁護士・市河真吾
賃貸マンションの更新日が近づいたのですが、家主から更新料の支払いを請求されています。支払わな ければいけないのでしょうか。
首都圏や関西の一部では、賃貸借契約において、更新料特約を設けていることがあります。
例えば、賃貸借更新にあたって、家賃2ヶ月分を家主に支払うといった特約です。
最近、裁判例でこの特約を消費者契約法10条に違反し無効とするものが何件かでてきましたので(京都地判平 成21年7月23日、大阪高判平成22年5月27日等)、この特約の有効性が議論されています。
消費者契約法とは何ですか。
消費者契約法というのは、事業者と消費者が契約を結ぶ場合に、消費者保護の観点から契約の取消、無効とな る場合を定めた法律です。同法10条は、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項 が民法の信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効と定めています。更新料特約を無効とする裁 判例は、更新料特約が合理性がなく消費者である借り主の利益を一方的に害するものと述べています。
そうすると、更新料は払わなくてもよいのでしょうか。
そうはっきり断言できるほど、この議論はまだ決着がついていません。更新料特約を有効とする裁判例もあるから です。その理由として、更新料は、@賃料の補充、A賃貸人の更新拒絶権の放棄の対価として受領される金員、 B更新することにより、更新後の期間は明渡しを求められなくなるという賃借人の利益の対価等であり、消費者であ る借り主の利益を害さないことをあげています。そのため、現在、最高裁での更新料特約の有効性についての判断 が待たれています。現実の支払い請求に対する対応としては、最高裁の判断が明白になるまで、更新料支払いを留 保するとの事実上の抗弁により、支払い延期を交渉したほうがよいでしょう。
家賃を1ヶ月分滞納したのですが、家賃保証会社から、滞納家賃の請求と賃貸借解除明け渡しの請求の電話が ありました。賃貸借をする際、保証人がいなかったので、家賃保証会社と契約をしたことは確かですが、応じなけれ ばならないのでしょうか。
まず、家賃保証会社との契約書を分析することです。通常、滞納があった場合は、保証会社が立替払いする契約 があり、その求償金の請求は有効でしょうが、あくまでも保証人的立場であり、家主に代わって、契約解除権や明け 渡し請求権は付与されていません。また、保証会社が家賃を払っている限り、滞納を理由とした賃貸借解除権も発生 していません。もちろん、借り主に無断での鍵交換や、所有物の処分などは、居住権侵害として違法と評価されるべ きものですし、それを容認する保証契約書ならば、消費者契約法10条による無効主張が可能となる余地がありま す。つまり、せいぜい理由があるのは家賃の立替求償権にしかすぎず、それ以外の不当な要求は拒否すべきです。 保証会社とは名ばかりで「追い出し屋」と呼ばれている悪質業者もありますので、早い段階から専門家のアドバイ スを受けたほうがよいでしょう。
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