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「公正証書遺言」について・・・・・・・・・・・ 弁護士・高井陽子


 私は2人兄妹です。母亡き後、一人で生活をしていた父が公正証書遺言を残して亡くなりました。遺言には、全ての財産を兄に相続させると書いてありました。私は、結婚する際に、支度金として父から300万円を贈与されていますが、他には何の援助も受けていません。父の遺言通り、私は何ももらえないのでしょうか。 
 


 
 遺言がある場合には、遺言に従う必要があります。

 しかし、家族財産の公平な分配との観点にも配慮して、民法上、一定の法定相続人には、被相続人が有していた相続財産のうち、一定割合の相続を保障する遺留分制度(民法第1028条以下)が規定されています。遺留分の割合は、相続人が誰であるかによって異なりますが、配偶者や子が相続する場合には、被相続人の財産の2分の1を法定相続分に従って分配した額が個々の相続人に保障される遺留分となります。

 本件では、相続人は、被相続人の子供二人ですので、相談者である妹に保障される遺留分は、父親の相続財産の2分の1の更に2分の1で相続財産の4分の1となります。

 ただ、本件では、相談者は父親から結婚の支度金として300万円を贈与されていますので、そのお金が相談者の遺留分に影響を及ぼさないかが問題となってきます。

 民法上は、相続人間の平等という観点から、被相続人から特定の相続人に対して婚姻に伴う生前贈与や遺贈等があった場合には、これらの贈与を特別受益と呼んで遺産分割の際に清算する旨が規定されています(民法第903条)。特別受益がある場合には、被相続人が相続開始時において有していた財産の価格に特別受益の価格を加えたものを相続財産とみなし、これを基準に個々の相続分や遺留分を計算します。このうち、特別受益を受けた相続人の相続分や遺留分は、算定された相続分や遺留分から特別受益を引いた額となります。

 本件では、相談者は、婚姻に際して300万円の贈与を受けていることから、父親の財産の価格に300万円を加えた額が相続財産となります。そして、その相続財産の4分の1から300万円を差し引いた額が、相談者の遺留分となるのです。今後は、相談者は、お兄さんに対して、自分の遺留分を返還するよう請求することができます(この権利を「遺留分減殺請求権」といいます。)。

 なお、この遺留分減殺請求権については、「遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間これを行わないときは、時効によって消滅する。」(民法第1042条)との規定がありますので、ご注意下さい。


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