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『破産をするとどんな制約がある?』・・・・・・・・・・・ 弁護士・水野賢一

 破産をすると戸籍に記載されて、選挙権がなくなると聞きましたが、本当でしょうか。また、破産をするとどんな制約があるのでしょうか。


 ご質問のような誤解をされている方がよくおられますが、破産をしても、戸籍に記載されることはありませんし、選挙権もなくなりません。かつては選挙権などの公民権を喪失したことがありましたが、現在ではこのようなことはありません。なぜこのような誤解がなされいるのかははっきりとは分かりませんが、もしかすると、かつてあったということの他に、破産という言葉が経済的な「死」というような印象を与えているためかも知れません。

 破産は大変なことだけれど、民事再生はそれほどでもないという印象もあるようですが、いずれも倒産手続という点では同じです。破産を気安くとらえていいと言うつもりはありませんが、民事再生に抱く印象と同じ程度にとらえればいいと思います。「ご破算で願いましては」と言われて、そろばんの珠を元に戻すことをしますが、破産も複雑になった債権・債務を整理して元に戻す手続と考えてもらえればいいと思います。

 もちろん、裁判所の宣告によってなされる手続ですから、それなりの制限はあります。破産宣告がなされると、宣告をされた破産者は、破産財団に属する財産の管理処分権を失います。宣告時の一切の財産が破産財団になるとされていることから、全ての財産の管理処分権を失うようにも思えます。

 しかしながら、差押の禁止される財産は破産財団とはなりません。従前、金銭についての差押禁止額は21万円でしたが、平成16年4月1日からは66万円となっています。更に、破産法の改正により平成17年1月1日からは99万円となる予定です。また、宣告後に取得したものも、破産財団とはなりません。

 また、破産手続中の制限として、居住等の制限や郵便物が破産管財人に配達されるというものがあります。これらの管理処分権、居住等や郵便物の制限は、破産手続が終了すればなくなるものです。

 そのほか、破産者には、弁護士や公証人の資格を失うとか、公認会計士、後見人、遺言執行者、法人の理事等になれないとか、取締役や監査役の退任事由となるなどの制限もありますが、これらも免責がなされれば当然に復権します。

 ちなみに、破産をすると当然に債務を免れるとの誤解もあるようですが、債務を免れるのは免責の効果です。

 破産は、経済的な「死」ではありません。多重債務で苦しむよりも、破産・免責によって「ご破算」とすることも許されるのです。


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