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「元アイドルの事件とリスクの向き合い方」・・・弁護士・齋藤崇史

 当職は本号の執筆時点である元アイドルの事件に関わっております。今回は、元アイドルの起こしてしまった事件についての責任と、御拝読いただいております皆様の活動にも影響することがあるということについて、言及したいと思います。
第1 現役有名人の事件
 芸能人、文化人、スポーツ選手などのいわゆる有名人と言われる方は、例えば薬物使用、交通事故、飲酒事案など様々な角度で新聞をはじめ週刊誌まで紙面を賑わせております。彼ら彼女らの行動が犯罪とならなくとも時には犯罪のように、また知人が犯した犯罪に巻き込まれて報道されるようなことさえあります。
 ここで重要だと考えるのは、法的な責任と有名人であるが故に受けてしまう、一般人以上に報道や心無いコメントなどによる精神的な苦痛は別問題であるが、本人にとっては切り離すことはできないものであるという事です。
 有名になるという事は、その方のプライベートも資質などという観点から報じられることがあります。そのため、事件などを起こしてしまった、関わってしまった場合に報じられるリスクは覚悟しなければならないのかもしれません。
第2 引退後の責任
 今回当職が関わっている事件は、元アイドルの引退後に、元アイドルだという知名度を利用せず、むしろ隠して行っていた仕事について、事件性があるとして逮捕され、大きく報じられてしまった事案です。
 本人は、知名度のあった元アイドルという事を公にせず、元アイドルということを利用せずにいたにも関わらず、逮捕後大きく報じられ、精神的に他の同種事件の被疑者被告人以上に社会的な制裁を受けてしまっています。
 例えば、芸能人やプロスポーツ選手などは幼少期から、自身の特技などに多くの時間を費やしているため、引退後に一般の会社員などとなる場合、社会人経験や通常人が経験してきた学生生活や学習面が欠如している場合も少なくありません。そのため、引退後に転職しやすい職業がある程度制限されてしまうような場合もあります。特に元芸能人の知名度を利用しようという方もいるため、良くも悪くも引退後もお誘いが続くようです。
 そして、勧誘を受けた事業や業務内容が適正なものか、そのような判断能力が乏しい場合、事件に巻き込まれてしまうことがあり、本件も発端はそのような悲惨な事情であったと感じています。
 現役有名人であれば、その仕事を続けていく場合、ある程度公人に近いため、プライベートが報じられるのは止む無しではないかと考えます。しかしながら、引退後、しかも現役時代の職業や知名度を一切利用せずにいた場合にまで、本件のように週刊誌やメディアに取り上げられてしまうリスクを彼ら彼女らは生涯負い続けてしまうというのは、あまりに酷であると思います。それが、有名人の宿命だというご意見もあるかと思いますが、幼少期から親の教育や周囲の環境から、その道を選ぶ以外の選択肢も少ない時点で、そのようなリスクを把握することは困難です。
 判決時には、判決書の中で、報道されたことによる社会的制裁を受けた事が明記されることがありますが、果たしてどれほど判決結果に影響しているものなのかも未知数です。
 そう考えると、引退後の責任も、現役の有名人の責任と大きく変わるものではないのではないかと思います。
第3 元有名人に関わるリスク
 多くの企業、個人事業主の方は、例えば企業や商品CM、HPなど広報活動や営業活動の一環として、元有名人の知名度やイメージを利用することがあるかと思います。
 その際、その方の印象は企業の印象とともに広く認識されることとなります。そのため、元有名人を採用したリスクは、依頼者も一考しなければならない場面も出てくると思います。時には元有名人に対する損害賠償なども裁判沙汰になっています。
本件は、刑事事件となり、大きく報道されたため注目を集めております。 第4 御拝読の皆様におかれましては、このような広報活動、営業活動にも法的リスクは潜んでいるのだ、という事を頭の片隅においていただき、リスクとの付き合い方を考えて頂ければと思います。ご意見、ご相談等ございましたらご連絡お待ちしております。

 


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