「私道の通行の法律問題と判例」・・・弁護士・松村博文
一 無償通行の形態
他人の使用する私道ないし隣地を対価を支払わないで通行する場合で、通行できる場合には以下の形態がある。
1 囲繞地通行権(民法213条)
これは袋地通行権とも呼ばれ、無償で通行できるが、その範囲は通行できる範囲であり、自動車の通行を認めなかったりと判例上制限が多い。
2 通行地役権
合意による設定であり、後述の使用貸借契約上の通行権と違い、物権であることから、効力が強い。反面承役地の所有者(道路を使われる側)も道路を使用することができるメリットがある。
3 使用貸借契約上の通行権
使用貸借であるので要物契約となり、引き渡しを受けて成立することと、引き渡しを受けた者が専有することの欠点がある。
4 使用貸借類似の無名契約
使用貸借の欠点を補うために認められたものであり、承役地をいずれも使用することができるメリットがある。
5 人格的権利に基づく通行権(最高裁判例)
最高裁判例によれば、「建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に解説されている道路を通行することについて私生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格的権利)を有するものというべきである(最高裁平成9年12月18日判決第1小法廷、民集51巻10号4241号)。そして、このことは、同条2項の規定による指定を受け現実に開設されている道路の場合であっても、何ら異なることはない」(最高裁平成12年1月27日判決)。
二 最高裁判例の要件
判例上の要件としては、まず、原告らが道路を通行するについて不可欠の権利を有する場合でなければならない。
第2に、最高裁判例の要件として右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときでなければならない。
第3に、最高裁判例の要件として、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限りでなければならない。
なお、このような道路として現実に開設されていない部分については、「自由に通行しうるという反射的利益自体が生じていないというべきである」とするのが最高裁判例の一貫した立場であるのに注意を要する(最高裁昭和63年4月19日第2小法廷判決・裁判集民事162号489頁、最高裁平成5年11月26日第2小法廷判決)。
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