「いろいろな働き方」・・・弁護士・関 友樹
1 昨今では外国人や夫婦共働きなど様々な労働者の属性・事情や働き方への考え方の変化によって、労働者の働き方が変化・多様化してきているところです。国会においても裁量労働制の拡張などが議論されていましたが、現在の労働法制における労働契約の種類や内容を把握することは今後の良好な労使関係を構築・維持する上でもますます重要なトピックスになりますので、以下解説をしていきたいと思います。
2 まず大きく労働契約は@期間の定めのない労働契約、A期間の定めのある労働契約の2種類が存在します。どちらが原則ということはありませんが、以前の終身雇用の時代であれば、@が多かったようですが、現在はAの働き方もままあるように見受けられます。両者の大きな差異は契約終了段階にあります。
いずれも労働者側からの退職はできますが、使用者側から一方的に労働契約を終了させたい場合、@では解雇権濫用法理(労働契約法16条)の適用があり「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には無効とされることになります。
一方のA有期労働契約においては、期間満了により更新しない限り労働契約関係は終了することが原則であり、更新しないという通知をすることで契約関係は終了します(いわゆる雇止め)。しかし、それでは、一定の有期労働契約者の権利を害することから、判例上ア実質無期、イ期待保護(反復更新)、ウ期待保護(継続特約)というそれぞれのタイプに当てはまると判断される場合に、解雇権の濫用法理を類推適用するという雇止め法理が認められてきました。この法理が明文化されたのが現在の労働契約法19条になります。そこにおいては、@有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであり、期間満了により労働契約を終了させることが、通常の労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる場合(1号)、A労働者において契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な期待があると認められる場合(2号)に、労働者が更新または遅滞なく有期労働契約の申し込みをした場合、解雇と同様「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には同一の条件で当該申込みを承諾したものとみなすとされています。これは判例をそのまま条文化したもので、前記アは1号にイ、ウは2号に対応することになります。
それに加え、特に重要な規定として,労働契約法18条は有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換を認めています。すなわち、通算した有期労働契約の期間が5年を超える現に締結している有期労働契約の期間満了までの間に期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなされることになるのです。この5年間の期間には一定以上の無契約期間がある場合にはそれより以前の有期労働契約期間は5年の算定期間に加えないというクーリング期間(同上2項)も定められていますが、これが適用されるケースは事実上限られるようにも思われます。そして重要なことが、かかる無期転換ルールが適用されるのは、施行された平成25年4月1日以降に締結ないし更新された有期労働契約に適用され、それ以前に締結された労働契約は5年の通算期間の対象にはならないのです。したがって、まさに今年の4月1日以降が無期転換ルールの適用元年となることを意味します。使用者も労働者もこのルールを正確に把握することが重要でしょう。
このようにしてみると現在は期間の定めのない労働契約と有期労働契約は立法によって差異がなくなりつつある方向にあるのです。
3 もう一点、特に法改正が多い特殊な労働契約として労働者派遣契約があげられるでしょう。派遣元と労働者の間の雇用契約は存在しつつ、派遣先の指揮命令下において労働するもので、雇用責任が不明確になるという点で問題があり、規制がされてきました。一方で、雇用機会の増加のニーズもあり、そのバランスの中で幾度もの法改正がされてきました。直近の改正は平成27年で、特に重要な改正点としては、@労働者派遣事業について一般的に許可制とされたこと(労働者派遣法5条)、A違法派遣がされていた場合に違法派遣受入時点で、善意無過失の場合を除いて、派遣先は派遣労働者に対して派遣就業に係る労働条件と同一の労働条件で労働契約の申込みをしたものとみなされ(労働者派遣法40条の6)るようになったことです。したがって、違法派遣がされた場合、労働者が承諾の意思表示をすれば、派遣先との関係で労働契約が成立することになるのです。
4 以上俯瞰してきたように、一言で労働契約と言ってもその内容は様々であり、その内容によって適用される法理もますます複雑になってきています。今一度労使ともに契約内容を確認し、正確に整理することをお勧めします。
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