■ Web版SUM UP


特    集

「改正民法が成立しました!」・・・弁護士・関 友樹

 去る今年5月26日、国会において民法の改正案が参議院本会議において賛成多数で可決、成立しました。今回の改正により、約120年ぶりの債権法に関する大改正が行われたことになります。漠然と債権法の大改正といわれてもあまりピンとこない方もいるかもしれません。しかし、今回の改正の目玉でもある債権法は私たちの生活に欠かすことのできない一般的な契約(定めのあるものを「典型契約」といいます。)についての改正を含むものであり、法律専門家のみならず、私たち国民全体にとって生活の根底が変わるといっても過言ではない大変重要な改正となります。

 さて、次に皆さまにとっての関心事はこのような生活にも影響を与える改正がいつから適用されることになるかということかと思います。今回の民法改正は、6月2日に公布されました。これにより国民は、新法の内容を知ることが出来るようになったことになります。ただ、この公布によって直ちに法律の効力が生じるわけではなく、広く国民に知らせるための周知期間が設けられることになります。この周知期間を経て施行日になって改正民法の効力が生じることになるのです。 具体的に、民法の一部を改正する法律の附則1条によれば、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することが原則とされており、最長3年間の周知期間が設けられる可能性があります。したがって、平成29年現在から3年後の平成32年になって施行されることになる可能性が高いです。オリンピックイヤーでもあり、経済的な取引が活性されると予想される3年後に日本の契約の仕組みが大きく変わることは非常に大きな意義があることであり、今から十分に備えておく必要があります。
 ただ、改正民法の施行により、直ちにこれまでの契約などすべての事象に対して新たなルールが適用されることになると、社会が混乱することも明らかです。そこで、民法の改正においても施行された際に既に存在する既存の契約等の処理について定める経過措置が置かれているのです。

 すなわち、改正事項のうち、契約に関するものは、原則として、施行日の日以後に成立する契約に限り、適用されることとされています。それより施行前に成立していた契約は、「なお従前の例による」(附則22条・27条・34条1項など)ということです。「なお従前の例による」とは、現民法を適用して解決するという意味にほかなりません。その意味で、現行の民法も改正民法施行後においても意味を持つことになります。契約を単位にして考えるので、たとえば施行の前に成立していた契約に債務不履行があった場合、それに対する契約解除や損害賠償に関するルールは未だに現行民法を適用して解決することになるのです。(附則17条1項)。
 このように、新旧のルールの適用に関する交通整理は法律上、はっきりとしています。しかし、果たして現実の社会において民法の切り替えと同時に何の滞りもなくスムーズにこの契約には改正民法を使う、この契約には旧民法を使うなどとして明確に分けられることが期待できるでしょうか。特に契約は自己に有利な解釈をしようとするのが通常の心理ですから、契約の解釈をめぐって争いが増えることは容易に想像できます。そこで、このような事後的な争いを未然に防ぐべく、あらかじめ「この契約には新しい民法を適用する」との合意をすることが考えられます。
すなわち、現民法においても契約自由の原則が基本であることから、このような合意をすることによって、新民法が施行する以前の契約についても当事者の処分を許す事項について、たとえば、その契約の債務不履行の場合の効果や解除権の成否についても、新たなルールが適用され処理されてよいことになるでしょう。したがって、施行日の約3年後を待たないでも、当事者の間で自分たちの取引についてはあらかじめ新しい民法を適用しようという相談を今からしておくことで、将来発生する可能性のあるリスクを低減させることが出来ます。

 今回の特集においては、特に注目が集まっている民法改正の中でもあえて改正の内容ではなく、いつから適用があるかについて重点的に触れました。これは、皆さまにとっていつから社会経済のルールが変わるのかそれに先立ってどのようなスケジュールで新しいルールについて備えればいいかについてまずお知らせできればと思ったためです。改正民法が施行されてから慌てて対応するのではなく、あらかじめ対策出来ることがあることも踏まえて対策しておくことが肝要だと考えられます。

 


[ TOPページ ]  [ 業務内容・費用 ] [事業所案内 ] [SUMUP ] [ お問い合せ


  (c)copyright akasakamitsuke sogo law &accounting office. all rights reserved.