「会社法改正」
・・・弁護士・吉川 愛
会社法は、平成26年6月20日に改正案が可決・成立し、同年6月27日に交付されました。そして、この改正会社法は、平成27年5月1日に施行されています。
この改正は、会社の企業統治方法(コーポレート・ガバナンス)を強化し、機能させることを目的の一つとし、その他株主の保護、会社法の実務上の運用の不都合部分等を改正しています。今回は、この改正となった会社法の一部の骨子をご紹介したいと思います。
1 社外取締役の機能活用
(1)就任要件の厳格化による監督強化
社外取締役については、基本的に就任要件を厳格化し、社外取締役としての役割を十分に発揮できる人を登用することとしました。 具体的には、@子会社の関係で、親会社等の関係者、A共通の親会社等に支配されている会社間の業務執行取締役、B当該株式会社の重要な役職となっている者の配偶者又は二親等内の親族は、いずれも実効的な監督ができない恐れがあることから、社外取締役にはなれないこととなりました。
(2)一定の会社に対する社外取締役を設置しないことの説明義務
社外取締役について、大会社で一定の要件を充足する会社について、社外取締役を置かない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を、定時株主総会にて説明をしなければならないとされ、相当でない理由がない場合には、社外取締役を設置することが求められることが大前提となっています。
(3)監査等委員会設置会社の新設 従前の会社の機関設計については、監査役会設置会社、委員会等設置会社などが存在していました。監査役会設置会社については既に社外監査役が存在し、外部の役員の登用をさらに検討しなければならないこと、委員会等設置会社については複数の委員会を設置する必要があり、会社としては組織が複雑になることに抵抗があるのかあまり利用されていない、などという理由から新設されたのが監査等委員会設置会社です。監査等委員会設置会社には監査役が存在しません。その代わりに、監査等委員会により、業務執行を監督します。構成員は3名以上の取締役からなり、委員の過半数は社外取締役であることが必要となります。監査等委員会は、実効的な監督ができるように、選任や解任、任期、報酬等について、特別な定めが置かれています。
2 資金調達
公開会社が募集株式(新株予約権を含む)の発行を行う場合には、従前は株主総会は不要であったところ、公開会社の財産状況が著しく悪化しており、緊急の資金調達の必要性がある場合などの例外の事態を除き、株主に募集株式を行うことを通知・広告し、その後総株主の議決権の10分の1以上の議決権を保有する株主が反対する意思表示をしたときは、株主総会の普通決議が必要となるということとしました。
3 親会社株主による子会社の役員等の責任追及
完全親会社の株主が、完全子会社の取締役等の責任について、一定の要件を満たせば責任追及を行うことができるようになりました。要件としては、まず会社に対し提訴の請求をし、当該会社が請求日から60日以内に、当該役員に対し責任追及の訴えを提起しない場合は、親会社の株主は、子会社のために、責任追及の訴えを提起することができることとなりました(全ての子会社に対して請求が可能ではなく、親会社に対し一定の影響力のある重要な子会社のみを対象としています)。
4 株主の株式等売渡請求
対象会社の議決権の10分の9以上を有する株主は、他の株主全員に対し、保有する株式等の全部を売り渡すことを請求することができるようになりました。当該会社の取締役会決議が必要となりますが、この決議を得られた場合、株式等売渡請求を行うことにより、一定の諸手続を経て、他の少数株主の承諾を要することなく売買契約が成立したのど同じ効果を発生させることができます。少数株主を排除することが可能となる制度が新設されました。
5 その他
(1)株主名簿等の閲覧等の請求につき、従前は、実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するものである場合に、会社はこれを拒絶できていたところ、この要件を撤廃しました。
(2)公開会社でない株式会社については、監査役の監査の範囲を会計監査に限定することを定款で定めることが可能です。会計監査のみに限定される会社は、監査役設置会社ではありませんが、これが会社謄本からは従前分かりませんでした。監査役設置会社かどうかで、役員が会社を訴えたりする場合の代表者が異なることとなるのですがこれを外形上把握する方法がなかったところ、今後は会社謄本をみれば分かるということになりました。
以上、一部ですがご紹介いたします。
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