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特   集

「犯罪被害者の刑事裁判参加制度」・・・・・・・・弁護士 市河真吾


1 平成19年6月、犯罪被害者が刑事裁判に参加する制度を導入する法律(「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」)が成立しました。平成20年12月までに本格的に施行される予定です。
  従来、被害者が刑事裁判に参加できる制度として、被害者の意見陳述の制度がありましたが、新法は、被害者保護の観点から、被害者のより積極的な刑事裁判への参加手続きを可能とするものです。具体的には、犯罪被害者が、公判期日(刑事裁判)に出席し、被告人や証人に対して尋問等を行うことを、認める制度です。

2 参加できる犯罪被害者等は、殺人、傷害など故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、業務上過失致死傷罪に係る被害者等です。かかる被害者等は裁判所が相当と認めるとき、刑事裁判への参加を認められます。

3 被害者参加の概要は以下のとおりです。
 @公判期日の出席
 A証人尋問…被害者等は情状証人に対して、情状についての証言の証明力を争うための尋問をすることができる。
 B被告人質問…被害者等は被告人に対して、意見の陳述に必要な限り、質問することができる。
 C論告の際の意見…被害者等は、証拠調べが終わった後に、訴因(起訴状にかかれた公訴事実)の範囲内で、検察    官の意見とは別に事実又は法律の適用について、意見を陳述することができる。

4 さらに犯罪被害者等が、刑事裁判所に対して、被告人に対する損害賠償請求の申立てがなされると、刑事裁判所、刑事事件について有罪の言い渡しをした後、損害賠償請求について審理することができる損害賠償命令制度も導入されます。
  つまり、殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた事件などの被害者等は、刑事裁判所に対して、別途民事訴訟を提起せずに、被告人に対して損害賠償を命ずる申立を認める制度です。これは刑事裁判に付随して民事賠償の命令を可能とする制度(附帯私訴)です。審理は原則として4回以内の期日で終結しなければならないとされ、申立手数料も2000円とされ、損害賠償命令は確定判決と同様の効力を有し、仮執行宣言も付すことができます。

5 また、検察官の証拠開示にあたって、被害者の住所氏名を非開示とするだけでなく、公判でも非開示とすることができることとなり(被害者情報の保護)、被害者の公判記録の閲覧謄写も大幅に認められます。なお、民事訴訟においても被害者尋問のビデオリンク、遮蔽措置等による保護が導入されます。

6 以上、被害者保護のための手続き参加は、被害者の権利の保護、救済を目的とするものです。しかし、被害感情がストレートに裁判に反映されると今後導入される裁判員の量刑判断に悪影響を与えかねない、結果が重大である場合に、冷静な事実認定が妨げられるおそれがある、裁判が被告人に対する報復の場となり、被告人の防御権行使が萎縮するなどの問題点が指摘されています。実際、新法は、施行3年での見直しが予定されています。


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