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特    集

「改正消費者契約法」・・・・・・・・・・弁護士・吉川 愛

  消費者契約法は、平成13年4月1日に施行されたもので、その内容は、業者が消費者に対し、不当な勧誘行為をしたり、不当な条項を用いた契約締結を行った場合に、一般的に弱い立場にある消費者を保護するため、その契約締結を無効にしたり、取消したりすることができること等を定めた法律です。街角でのキャッチセールスによる絵や宝石の販売、先物取引など専門性の高いものへの勧誘、英会話学校への入学勧誘などの中には、消費者が断りにくい状況の設定をしたり、内容を不当にゆがめて勧誘することにより、消費者の冷静な判断をすることを妨げて契約を締結してしまうことがあります。この場合に、一般の民法の規定よりもより消費者保護を厚くしたものといえます。もともとの消費者契約法については、既にサムアップの3号、15号で取り上げていますので、詳細はそちらをご確認下さい。

 この消費者契約法が、平成18年5月31日に改正され、平成19年6月7日に施行されました。そこで今回は消費者契約法の改正された部分について取り上げたいと思います。

 今回の改正の中心は、消費者団体訴訟制度が設立された点です。消費者団体訴訟制度とは、内閣総理大臣から認定を受けた消費者団体が、不当な勧誘行為や、不当な条項を用いた契約締結を行っている事業者に対して、不当な行為の差止請求をすることを認める制度です。

 仮に一消費者が、事業者に不当な勧誘行為によって契約を締結してしまうようなことがあったとしても、従前は訴訟に対する費用やその他の労力などの関係から、 結局のところ泣き寝入りをしてしまうことが多々見られていました。つまり、20万円で買った絵画について裁判を起こそうとすると、労力がかかってしまう上、訴訟費用や弁護士費用などで結局お金を取り返せてもほとんど自分の手元には残らない状況になってしまうことがあり得るのです。何百人という被害者が、個別に訴訟を起こすことを想像すると、裁判所の負担も莫大になってしまいます。これらの問題を解決するための一方法として、弁護士が弁護団を作って被害者を多数集め、集団訴訟を起こすことがあります。しかし、この方法でも、被害が全国規模であり被害者が全国各地に散逸しているような時には、全ての被害者を網羅することは不可能であり、各地域で弁護団が作成されるような場合には、紛争の解決方法が弁護士や弁護団によって異なってしまうということが生じ得てしまいます。

 このような問題があった中で創設されたのが消費者団体訴訟制度であり、適格消費者団体が当事者として事業者に対して訴訟を起こすことが可能になったのです。消費者被害を守るための消費者団体は、従前からも存在をしており、被害者救済に努めてきていましたが、被害を防ぐために業者に対してできることは、勧告のみに止まっていたため、抑止効果としては薄いものとなっていました。しかし、認定を受けた消費者団体は、今後業者に対して、裁判により差止請求をし、全国的な被害がある場合でも、統一した解決が可能になるのです。

 差止請求を適格消費者団体に与える目的は、個々の被害者救済ではなく、被害の拡散防止による不特定多数の消費者の利益の擁護にあります。従って、差止請求ができる行為は、不特定かつ多数の消費者に対する関係でのものでなければなりません。相手方は、基本的には、行為を現実に行い又は行うおそれのある者となります。

 そして、一つの適格消費者団体が、相手業者に対して差止請求訴訟を行って確定判決を取得した場合、他の団体は、その相手方業者に対して訴訟を提起することはできなくなります(請求権制限効)。請求権制限効があることから、適格消費者団体が確定判決等の債務名義を得た場合には、その差止請求権を放棄することができないものとし、確定判決等による強制執行の手続きを怠り、不特定かつ多数の消費者の利益に著しく反した場合には、適格消費者団体の認定を取り消す等の規定が用意されており、確定判決等の実効性を確保しています。確定判決等を得た場合には、相手方事業者に対して、強制執行をすることとなりますが、その方法は基本的には間接強制(従わない場合は、金銭的なペナルティーが与えられる制度で、その金額は執行裁判所によって決められます。)によります。

 以上のように、消費者団体制度は、現実の被害者に変わって特定の団体が統一的救済を図るための制度として、今後の運用が非常に期待されるものです。ただし、この制度は、消費者契約法のみに関する制度であり、一般の民法や、借地借家法、その他の法律に関する事案には適用されません。また、認められているのは差止請求のみであり、適格消費者団体を当事者とする損害賠償請求は認められておりません。スタートしたばかりの制度であり、どのように運用されていくか、注目されるところですが、消費者の利益擁護のため、適切な運用がなされるよう、私たち弁護士も尽力したいと考えています。


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