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特    集

少年法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・弁護士・吉川 愛 

1 少年法改正の動向
  近年,未成年者(少年)による凶悪犯罪が目立って報道で取り上げられています。昨年も,世の中を震撼させるような事件が数件ありました。日本法では一般の成人と少年では刑事事件の手続が異なります。成人には主に刑事訴訟法の手続によって捜査及びその後の手続が進められますが,少年は,少年法により手続が進められます。少年法では,  少年の健全な育成と,非行少年の性格矯正と環境調整を主な目的として刑事事件について特別の措置を設けています。しかし,このような少年による重大犯罪が目立って報道される風潮からか,少年法について見直しの必要性が議論 されています。   神戸須磨の連続児童殺傷事件がきっかけとなり,少年法改正の議論が起り,平成12年に少年法は改正され,平成13年4月1日から施行されています。改正少年法が現在運用されていますが,少年の重大事件に関して近年,さらに  注目が高まっていることから,改善の必要性が再度議論されてきており,昨年「少年の保護事件に係る調査手続等の整備に関する要綱」が法制審議会において採択されました。今回は平成12年の少年法の改正について紹介し,今,  どのような法律ができようとしているかについて紹介します。

2 平成12年少年法改正
 (1) 少年事件では,事件は家庭裁判所で審理されることとなり,原則的に検察官は関与できませんが,一定の犯罪に
   ついては裁判所は検察官に事件を送致することができます。従前,16歳未満の少年は検察官に事件を送致される
   ことはなく,家庭裁判所で処理されていましたが,16歳未満から14歳未満にその制限年齢を引下げました。
 (2) 16歳以上の少年の故意行為により被害者が死亡した場合,(1)の判断において,裁判所は少年を原則として検
   察官に送致しなければならないこととなりました。
 (3) 改正前は一人の裁判官が少年について審判をしていましたが,裁判所が必要と考える場合には,三人の合議体
   によって審理ができるようになりました。
 (4) 検察官は家庭裁判所の審判手続に関与できませんでしたが,一定の事件について裁判所は検察官を審判に関与
   させることができるようになりました。
 (5) 犯罪被害者保護の要請から,通常非公開の少年事件について,被害者及びその親族等は,審判において,意見
   を陳述させることができるようになりました。

3 法制審議会の決議による少年の保護事件に係る調査手続等の整備に関する要綱等
 (1) 犯罪を犯す恐れのある少年(ぐ犯少年)の調査については児童相談所が行い,警察は関与することはありません
   でしたが,この調査について警察官による任意調査権限を明確にして,強制調査権限を付与します。
 (2) 犯罪を犯す恐れがあると疑われる少年に関し,警察官に少年や保護者に対する任意調査権限を付与し,公務所又
   は公私の団体への調査権限を付与します。
 (3) 犯罪を犯した少年(触法少年)について,警察は14歳未満の少年であればそれが分かった時点で捜索・差押え等
   の捜査をすることができませんでしたが,刑事訴訟法の処分に関する規定を準用しこれを可能にします。
 (4) 少年院について,現行法では14歳未満の少年は少年院に送致されませんが,これを14歳未満の少年でも可能と
   します。
 (5) 保護観察中の遵守事項を守らない少年に対して,家庭裁判所が少年院送致等の決定をすることができることとし
   ます。
 (6) 一定の重大事件について,家庭裁判所が職権で少年に弁護士(付添人)を選任することができる制度を導入しま
   す。

4 少年事件に関する法律については,今後も議論が繰り返されます。成人と同じように 扱い,厳罰化を図ることにより少年犯罪の増加防止の要請を重視するか,可塑性可逆性 のある少年であることに鑑み,その保護育成というもともとの少年法の趣旨を尊重する のか,バランスの調整が非常に難しい問題です。


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